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2014年10月

2014年10月28日 (火)

ベビーアロマ/妊産婦のアロマはなぜ危険なのでしょう?

過日、大きな病院の産婦人科で、看護師長が壁に張った「アロマセラピー」ご希望者へと題した掲示板の記事を見つけました。


さっそく、当該婦人科の医師に質問をしましたところ、その医師はアロマセラピーのことはご存知なく、看護師さんが中心に行っているもので、「患者さんが希望されることもある」とおっしゃっておられました。


医師の中には、ご自身の医院でアロマセラピーを取り入れていることを謳っておられる方もいらっしゃるようですが、大きな病院における場合などは、看護師さんらが中心になって治療の補完を目的に、精油による施術をなさっておられることが殆どではないかと思います。公立の病院でも、同じような事例がありますので、本当に驚きを隠せません。


産院では、希望する妊婦さんに施術をし、出産時に精油を利用することもあり、新生児に精油を使ってベビーアロママッサージを推奨してこともあるようです。私どもの講習を受けられたアロマセラピーの国際ライセンスをお持ちの方からは、アロマ教育機関で、出産時にジャスミンアブソリュートを局所に塗布する施術を習ったと伺いました。そのような情報を提供なさっている講師のお名前を伺いましたが、教えていただくことができませんでしたので、真偽のほどを確認することができませんが、同じ組織で勉強をなさった別の方も、同様のことを習ったとおっしゃっておられますので、きっと、そのように教えていらっしゃるのでしょう。何と危険な行為でしょうか。 そういう施術を行っておられる看護師さんたちは、大変高額な講習料を支払って、様々なアロマ教育機関でアロマセラピーの技術を修得していらっしゃるようですが、果たして、精油がどういう化学物質であるのか、品質の判定基準はもとより、精油成分が妊婦さんの体内に入った場合の代謝のこと、胎児や新生児、幼児の体内に精油成分が入ると、どのような影響があるのか、という情報を殆どお持ちではないように感じられます。世のアロマ教育を大変疑問に思います。 学術的な結果に基づいて施術をしている、とおっしゃる方もおられるかと思います。そうですね、毎日のように、国際的な学術雑誌でアロマの成功例や研究調査が報告されています。追いついていくのが困難なほど、連日情報が更新されています。でも、ここでちょっと待って! 確認しなければならない大切な事項があるのです。


アロマセラピーで利用する精油の品質もそうであるように、学術発表と言っても、その論文が採択された学術誌にとんでもないからくりがあるとしたら、どうしますか?通常の学術論文は、それぞれの分野の専門誌があり、厳しい専門家の査読(審査)過程を経てからでないと、採択されません。それも、論文の要約を見て興味ある内容であれば、それなりの料金を支払って、論文を購入しませんと全文を読むことができません。


近年、オープン・アクセスと言って、査読基準が大変ゆるく、論文を投稿した研究者が一定の料金を支払って、論文をその出版社のサイトに掲載してもらうシステムが有象無象林立してきております。詐欺まがいの出版社も多く、袖の下で、どんな論文でも掲載してしまい、濡れ手にアワのビジネスを目論んでいるサイトなどもあります。たった一人で何十もの雑誌を扱うふりをしている強者もいます。大きな大学の研究者でさえも、こういうビジネスの餌食になっている場合があり、驚かされますが‥。巨大な精油販売会社の社長さんは、自分で資金を出して研究者を雇い、自分も論文の著者の一人として名を連ねておられます。そういう情報が、学術的な根拠になりますでしょうか?オープン・アクセスの学術雑誌がすべて怪しいということではありませんので、誤解をなさらないで下さい。米国の国立衛生研究所(NHI)などが、研究者らに、それぞれの専門誌で発表した論文は、1年を経たら、可能な限り、長い歴史がある特定のオープン・アクセスの雑誌(PlosOne)で論文を公表するようにと指導している場合などもございます。このような老舗のオープン・アクセスの雑誌は、一定の評価を受けている場合も多く、研究者たちは第二希望先として、論文を投稿したりすることも多いかと思います。そういう歴史のある、査読システムが備わった雑誌の記事は、読者は論文を無料で読めるので、大変ありがたいシステムです。


話が横道にずれてしまいましたが、学術的根拠と言っても、しっかりと発表された雑誌の質が問われるということをお知らせしたいと思いました。前にも述べましたように、アロマのエビデンス(学術的証拠)は、総崩れの状況下にあります。発表された雑誌の質もそうですが、実験に使用したアロマ製品の品質が不明なことも多く、実験者のチームが自身で分析を行う例は極めて稀です。成功例ばかりが報告されて、失敗例は葬られ、発表されることはまずありません。 さて、ここでベビーアロマの本題に戻ります。妊婦さんやベビーアロマを推奨なさる方々は、リンパ球のうちのヘルパーT細胞に関する勉強をなさったことはおありでしょうか。妊娠は、血液型の異なる子を宿すこともありますので、成功した移植という考え方ができるほど、とても不思議な現象なのです。妊婦さんは、お腹の子どもを異物と捉えることがないように、自分の免疫機構を組み替えて、胎児が体外に排出されることを防いでいるのです。通常は、2種類あるヘルパーT細胞のI型(Th1)が優勢で免疫機能が維持されていますが、妊娠中は胎児共にヘルパーT細胞 II型(Th2)が優勢となっています。出産と同時に、共に早期にこのヘルパーT細胞の型をTh1優位に導き、免疫系を活性化しないと病原体に襲われると生き残れません。 アレルギー体質の子は、Th2が優位であることがわかっています。Th1とTh2のバランスが重要なことは言うまでもありませんが、生まれたてでTh2が優勢の時期に、精油などの生体外異物(Xenobiotics;ゼノバイオティックス)などのアレルゲンに曝露されると、生まれながらにアレルギー体質となってしまうので、医学界でも新生児に対する抗菌剤の投与などは、必要最小限に止めることが重要だと言われています。


そんな時期に、なぜアロママッサージを新生児/乳幼児に行わなければいけないのでしょう。人間は哺乳動物です。母親の乳のにほいを認識して、乳児は受乳します。そんな時期に、人工的な香料に曝露されると受乳をストップする事態も起こり得ます。看護師さんたちの研究をみると、ラベンダー精油で赤ちゃんが良く眠るとか、母親がリラックスできるとか、大事なことを見逃しています。精油の偽和云々は関係なく、精油そのものがXenobioticsであることを忘れてはなりません。それにも増して、人の新生児の肝臓酵素は、猫と同様に働きが不完全で、自分の胆汁すら代謝できずに黄疸が起るほどなのです。どうして、精油を使わなければならない理由があるでしょうか。 メディカルアロマの情報を発信なさっている方々は、得られた情報が根底から疑問符がつくことを認識なさっていただきたいと願わずにはいられません。

2014年10月25日 (土)

抗生剤と精油/耐性菌の問題

夏期下痢症を起こしたり、尿路感染症の原因になる腸内細菌(グラム陰性桿菌)であるセラチア属、モーガネラ属、プロテウス属に属する細菌は、おそろしい院内感染を引き起こすこともあり、注目されている微生物です。


精油に対して、種々の細菌類が耐性を示すようになったという報告は、極めて限られたものしかありません。ある微生物に対して、ティートゥリー精油の濃度を上げないと殺菌力が減弱したとか、あるいは上述の腸内細菌に対し、抗菌力の強いオレガノやシナモンの精油を種々の抗生剤と組み合わせて実験をしたところ、細菌類をオレガノで処置してから抗生剤を使うと細菌の抗生剤に対する感受性に変化がみられたとか、前処理で、オレガノ自体に対する感受性が変化したなどの報告程度です。
in vitro(試験管内)の実験であっても、細菌が精油に対して強い耐性を獲得したというニュースは流れてきません。



私たちが病気になった時に服用する薬剤は、抗生剤の場合に合剤として抗菌スペクトルを広げるために他の抗生剤を組み合わせて投与したり、種々の目的別の薬剤を一緒に服用することはありますが、細菌に対する場合の話になりますと、単体の薬物は、構造は複雑でも1種類の化合物です。細菌は、敵の数が少ないですので、比較的簡単に敵の弱点を見いだして、耐性を獲得しているとも考えられないでしょうか。


精油の場合は、1滴の精油中にも、抗菌力を発揮する成分として、数種のアルコール類、フェノール誘導体などなど、ざっとカウントしても数多くの成分が混入しています。いえいえ、超微量の成分まで精査すれば、敵ばかりとは言えませんが、無数の有機化合物が入っていますので、どれを敵として捉えるかだけでも、細菌にしてみれば、非常にやっかいな敵であることでしょう。

以上は推論でしかありませんが、多くの病原細菌が耐性を獲得する時に関係するプラスミドDNAについて少しばかり勉強をすると、塗り薬として使用する際の精油のすごさの謎が解けてくるかと思います。

ここで、少しばかり動物の遺伝子のことをおさらいしておきましょう。"DNA"とか"遺伝子gene"とか、"ゲノムgenome"などの用語がよくメディアでも取り上げられますが、遺伝子geneというのは、様々な遺伝情報を担う因子そのものを指し(例えば、大型犬の体格を決める遺伝子など)、DNAという用語はその遺伝子を構成するデオキシリボ核酸という"物質の名前"です。[ここでは、RNAを遺伝子とするウイルスのことは除外してお話をすすめます。]4種の塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)が繋がったDNAの鎖が二重螺旋構造をとっていることは有名ですが、その中の一部の単位(部分)が遺伝子にあたると思って下さい。この遺伝子が連なって、それぞれの染色体上に並んでいます。ゲノムというのは、ある生物の染色体上にある全遺伝情報を網羅したものを意味し、gene(遺伝子)とchromosome(染色体)を合わせた造語です。


このDNAの二本鎖には、親鎖(遺伝子の配列がコードされる先端にプロモータという領域がある鎖)があり、ここに重要な暗号がしっかりと刻まれています。なぜ二本になっているかというと、一種の保険がかかっていると言われています。遺伝子の増幅中にDNA親鎖に変異が起った時などに、副鎖の方に、親鎖とは塩基が相補的ではありますが、その配列情報が残されているので、修復の可能性が高まるからではないかとも推察されているようです。

遺伝子は複製される際に、ちゃんとこの親鎖の情報をmRNA(メッセンジャーRNA)に酵素の力を借りて余分な部分intronを除き、exonと呼ばれる部分に書き込まれた蛋白質合成のための遺伝コードだけが手渡されます。その際に、塩基の1つであるDNAのチミンは、RNAでは別のウラシルという物質に入れ替わります。このタンパク合成の暗号(3種の塩基から成るアミノ酸をコードする"コドン"と呼ばれる単位)を持つmRNAは細胞核を出て、細胞質にあるタンパク合成工場となるリボソームという部署へ運ばれていきます。

動物の体内をめぐるホルモンや酵素も1種の蛋白質なので、特定のアミノ酸が組み合わさって作られています。

以前の記事で、猫はUGT1A6という大変重要な肝臓の代謝酵素に関して、このコドン情報のうち、タンパク合成過程で、ここでアミノ酸を繋げる作業を中止せよ!というストップコドン(別名:終止コドンは、ナンセンスコドンとも呼ばれます。アミノ酸をコードしていない意味の無いコドンの意味になります)に変異があるため、正常な酵素がつくられないというお話をしたことを思い出して下さい。遺伝子のこのような情報を精査するには、コドンが刻まれているmRNAを解析する必要があるのです。mRNADNA親鎖の情報を相補的な塩基に置き換えて写し取った情報を持ち、1本鎖構造をしています。

その後のリボソーム内では、mRNAを筆頭にRNA三銃士と呼ばれる、さらなるrRNA(リボソームRNA)やtRNA(トランスファーRNA)がそれぞれの役目を発揮して、この工場内で定められたアミノ酸が順番に繋げられて、酵素などの蛋白質が作られていきます。

非常に込み入った話になってしまいましたが、お話をプラスミドに戻します。プラスミドDNAは、上述のような遺伝子とは異なり、細菌などが増殖する際に重要な染色体上のDNAではないのですが、近隣の細菌同士で性繊毛などを介して連結し、情報をやり取りする不思議なメカニズムを持っています。病原細菌に対して抗生物質が投与されると、細菌は当該薬剤を敵とみなし、抵抗力をつけるために耐性を獲得していきます。その際に、このプラスミドDNAに変異が起って、耐性菌になっていきます。そのプラスミドDNA情報は、あっという間に近隣の仲間に伝えられるので、病原細菌はあっという間に、その薬剤では死滅しないという手強い病原体に変化してしまうのです。

医学の分野でも、このプラスミドDNAを消滅させて、病原体に耐性を獲得させまいと、antiplasmid効果を期待して、Chlorpromazinepromethazineなどの薬剤が試用されたことがありますが、劇薬に指定されているものもあり、抗菌剤との併用が困難を極めます。

ここで、精油でなぜ耐性菌ができにくいかという理由をご説明したいと思います。ただし、精油はボトルごとに成分変動が激しいことと、学術的報告がなされていても、研究に使用した精油の偽和の有無が不明な場合が殆どで、世のアロマ情報は真のエビデンスに欠けることが多いことなどから、精油を通常の西洋薬の飲み薬と同等と捉えることはできません。ここでは、外用薬として、塗布することに限ってお話させていただきます。

まず、病原細菌が耐性を獲得するには、プラスミドDNAなどに変異が起らなければなりません。ニトロソグアニジンという化学物物質で細菌を処理すると、その刺激でDNAに突然変異を起こすのですが、細菌を極めてうすい濃度のラベンダー精油で前処理しておくと、この突然変異が起らないことが確認されています。精油の中には、細菌のDNAの突然変異を起こしにくくするものがあるということが1つ目の理由です。

2つ目の理由は、精油の中には、Plasmid DNAを消失してしまうantiplasmid作用(別称;Plasmid curing, Plasmid elimination)を持つものがあることが判明しています。プラスミド自体が消失してしまうと、病原細菌は耐性を獲得する手段を失うということになります。その作用を有する精油の代表格は、ペパーミント精油と、その主成分であるℓメントールです。ペパーミント精油は0.325mg/mL96%のプラスミドを消滅させる作用があるとの報告です。その他、ユーカリ精油、ローズマリー精油にも、多少のantiplasmid作用があると述べられていますが、数十ドルするこの論文を購入して読んでみると、単にユーカリ精油、ローズマリー精油とだけ記載されており、精油を採取した植物の学名はおろか、研究者自身による成分分析もなされていませんので、数多くあるユーカリ精油の何の種類なのか、ローズマリー精油の主成分が何なのかが全くわからず、アロマ製品の偽和の有無に関する手がかりも全くつかめませんので、大変がっかりです。しかし、真のエビデンスは揺らぎますが、合成ℓメントールなどでantiplasmid作用が報告されていますので、精油における耐性菌の発現報告が限られていることからも、それなりの作用があることは間違いないと推察しています。

3つ目の理由は、前の記事でお知らせした通り、精油の成分が大変複雑で、ブレンドをすることにより、抗菌スペクトルが広がる可能性も示唆されます。精油の中に、複数のphytoalexin(フィトアレキシン;植物が産生する抗菌性の二次代謝産物)が存在することも、病原体にとっては耐性を獲得するのにやっかいな相手なのでしょう。正しい精油を使うことが絶対条件ですが、多剤耐性の病原菌が問題視される昨今、外用薬としての精油の利用価値は今後ますます高まるのではないかと感じています。

2014年10月22日 (水)

精油の和名

精油を食品として輸入をしている企業などがあり、聞き慣れない名称を用いている例があります。その一方で、英語読みのカタカナ表示であったり、日本独自の呼称を用いたり、精油のネーミングは統一されていないので、当然、採取した植物の学名表記が必須となります。

 

現在、一般に用いられている精油の和名は、日本のアロマセラピー(アロマテラピー)黎明期にネーミングをなさった方の訳がそのまま利用されているのだと思います。実際には、暗黙の了解はあるものの、こうでなくてはならないという和名はないのではないかと思いますが、40年ほど前、まだ、日本にアロマセラピーなる用語が紹介されていなかった時代、精油の研究をなさっていた正田芳郎先生が、数多くの精油をGC/MSで成分分析を行い、国際的に発表をしました。その際に、ちゃんと和名を付けて下さっていました。いくつか興味深い例をご紹介します。

 

ラベンダー油:学名はL.officinalis/L.angustifoliaで、今で言う真正ラベンダーのこと。この真正ラベンダーという語は、True Lavenderを訳出した名称だと思いますが、医療家は真性ラベンダーと訳すことも多々あるように感じています。L.latifoliaとの交雑種は、正田氏はラバンジン油と表記なさっています。今で言うマージョラム精油はマヨラナ油、タイム精油はサイム油、バジル精油はバージル油、オレガノ精油はオリガナム油、コリアンダー精油はコリアンデル油、シナモン精油はシンナモン油、サッサフラス精油はオコチア油、ナツメグ精油はニクズク油、サンダルウッド精油は白檀油、シダー精油はチェダー油、などなど、大変興味深い昔の精油和名情報です。

 

植物の呼び名は、国により、地方によっても変わりますので、採取した植物の万国共通の学名が付されていれば、その国々/地方地方で利用する精油名の呼称に多少の差があっても、あまり目くじらを立てる必要はないのではないでしょうか。

 

ちなみに、動物のアロマセラピーでは、人で利用されている多種多様な精油は必要としません。学術的に効果/効能が証明されている精油やハイドロゾルは、ほんの一握りです。臨床で利用する際には、製品に自動的に付されてくるデータでなく、専門家に分析を依頼して、毒性のある成分が含まれないことを確認してから使うことが鉄則です。近年は、精油を供給する会社が学術的な機関に分析を依頼して、それを提供して下さる場合もありますので、精油やハイドロゾルを購入する際は、データの出所をしっかりと確かめられると良いでしょう。

かつて日本は精油の主要生産国だった!

日本にアロマセラピーという語が紹介されたのは、英国のアロマセラピストであるロバート・ティスランドが1977年に出版した「The Art of Aromatherapy」が、1985年に「芳香療法の理論と実際;高山林太郎訳」として出版されたのがきっかけでした。

 

これより約10年遡りますが、1976年のこと、日本ではガスクロマトフラフィーやマススペクトロメトリーなどの技法が一般的ではなく、マススペクトルの解析データライブラリーもなかった頃、京都薬科大学薬化学教室の正田芳郎教授が、自身が入手した数々の精油で分析を試み、その結果を世界に発表しています。その頃は、さかんに合成香料が生産される時期でもあったため、著書中にも精油の偽和に関した記述が数多く記載されています。

 

彼の著書は、欧米の精油分析者たちのバイブルとなり、今でも引用/推奨される場合がありますが、良識ある化学者たちからは、正田教授が分析した精油の多くで偽和が疑われるものも多く、質量分析法による成分の同定法にも多くの誤りがあることが指摘されています。そのような昔から、精油に偽和がつきものだったのですね。現在の良識ある精油分析化学者たちが口を揃えて市販の精油の品質を嘆いているように、精油ビジネスの背景には、恐ろしい秘密の舞台裏がありそうですね。

 

日本の精油の歴史にもどりますと、かつて、15種以上の精油の生産がさかんに行われていた時期がありました。1940年代まで、ペパーミント(Mentha arvensis)精油は年間で600800トンも国内で生産され、世界のペパーミントの70%を日本のハッカが占めていたとの記録があります。しかしながら、1965年頃には、年間100150トン程度に激減し、合成のメントールなどが生産されるようになって、一気に精油生産は減衰していったのでした。

 

クスノキから採取されるカンファー精油も同じように、1903年~1950年頃までは、日本は世界一の生産を誇っていました。九州地区がその主要産地で、1966年の総生産量は546トンと記録されていることから、かなりの量であったことが伺われます。1941年に台湾より別種のLinalool treeと呼ばれるホーリーフ精油がとれる木が導入され、和歌山県や四国で栽培が行われるようになりました。1969年の時点で、高知県では35トンのホーリーフ精油が生産されたという記録が残っています。栽培農家は高知では500軒以上もあり、鹿児島が50軒、和歌山では100軒ほどの農家がこのlinalool treeを山の斜面を利用して栽培していたとのこと。Linalool treeであっても、根や幹、枝、小枝、葉などで、その主要成分には非常なばらつきがあり、linaloolの含有量が多いのは、若葉の蒸留から得られる精油が抜群だったとの記録が残されています。

 

その他、この時期に日本で生産されていた精油には、ユズ精油、ガーリック精油(当時米国、ヨーロッパに輸出されていた)、ゼラニウム精油(四国で1965年に約7.5トン)、ヒバ精油、ラベンダー精油(1965年に約3.5トン)、シソから採取するペリラリーフ精油(推定で1~2トン)、パインニードル精油(約10トン)、スペアミント精油(約0.5トン)、ベチバー精油(196465年当時、年間約2トン)などがあり、さらにシトラス系精油、ハマナスアブソリュート、ジャスミンコンクリート、パチョリ精油などなど、多彩な精油が市場を賑わし、日本の天然精油の品質の高さは世界中から大きな期待を集めていたようです。ハマナスから採取された精油は、香りが似ていることから、ローズ精油の代用品としても歓迎されたとのこと。その後、今理研の騒ぎで著名な野依良治教授が光学異性体を分離する方法を開発されたため、信じられないような巧妙な合成香料が日本で生産されるようになり、欧州の化学者たちが驚嘆したことが伝えられています。現在、日本では小規模ながら、約10種類の精油が生産されています。

 

精油の成分分析と言えば、当方の講座を受講されたアロマセラピストさんで、次の用語の差をご存知の方は皆無でした。

クロマトグラフ、クロマトグラフィー、クロマトグラム、マス・スペクトロメータ、マス・スペクトロメトリー、マススペクトル

 

2014年10月21日 (火)

精油の抗菌作用

その測定法は、精油が気化する性質があることで困難を極めます。アロマ界で一般的に利用されるアロマトグラムは、フェノール(石炭酸)係数法であり、すでに十数年前から、この方法は非常に殺菌力の強いフェノール化合物以外の化合物に応用するのは合理的でないとされています。

 

溶解状態の接触法による抗菌力の判定には、濾紙ディスク法や寒天培地希釈法によるMIC(最小発育阻止濃度)の測定、液体培地希釈法によるMICの測定、蒸留水希釈法によるMBC(最小殺菌濃度)の測定、さらには、蒸気状態接触法にも様々な方法が提案され、それぞれの実験にて、抗菌性の強い精油とその主成分などが学術的に発表されています。

 

2006年には、井上重治先生が、精油の蒸散を阻止した場合の微生物の阻止円を組み入れたδ(デルタ)値の算出法を提案し、溶解状態の精油と蒸気状態の精油の抗菌力を客観的に比較する方法を発表なさいましたが、寒天培地に接触しないように、蓋の部分に貼付けて蒸気状態の抗菌力を測定する際に、蒸発した香気成分が寒天培地に到達して培地に吸着する可能性が考慮されておらず、完璧な蒸気状態のみの抗菌力判定とはならないとも言われており、国際的にこの方法が採用されない由縁ではないかと考えています。この実験からは、概ね、実験に供した精油の殆どで、蒸気状態の精油の方が、強い抗菌力を示すことが報告されていますので、このことは揺るぎない事実ではないかと思われます。

 

しかしながら、合成香料は別として、上述の精油の抗菌力を判定した様々な実験では、残念ながら実験に供した精油の分析条件を示した成分分析がなされておらず、精油に関する偽和の有無を判定する手がかりを得ることができません。実験に供した精油を一般化した結果が当該精油の抗菌力として報告されており、精油は抽出されるロット毎に成分が激しく異なることが考慮されていないのが実情です。

 

精油を一般化して論じること、実験に供するアロマ製品の分析を研究者が自分たちで実施しないこと、この2つが世のアロマ情報に一番欠けている部分ではないかと懸念しております。このような理由から、ネットに浮かぶレシピ情報を鵜呑みにして、町のアロマショップで入手した製品でブレンドをつくったとしたら、一体、何が起るでしょうか。


アロマ関連の巨大な団体がアロマの日なるものを設定し、正しい精油の情報を提供することなく、世の女性達に精油を売らんかなのビジネス展開をもくろんでいます。各企業にも喫煙室ならぬ「喫香室」を設けて、いつでも自由に精油の香りを楽しめるようにとの提案もしているとか。


精油は人工的に高度に濃縮された有機化合物です。その成分は、まだまだ完全に解明されたわけでもありません。利点ばかりに目を向けて、精油の副作用/有害作用に蓋をして、正しい情報を開示しないことは、詐欺商法に匹敵しないとも限りません。


常に金銭のにおいがつきまとう「香害」そのものではないかと。
私たちに絶対の信頼をおいて疑うことをしない可愛い動物たちが、人間が行うアロマセラピーの犠牲にならないよう、常に傍らにいる猫や犬のことを忘れないでいただきたいと思います。

精油の抗掻痒作用

正しい精油には、ヒスタミンの受容体であるH1を阻害する作用がある成分を含むものがあります。痒みという感覚は、様々で複雑な理由が原因で起ります。オピオイドが関係するような中枢性の痒みにアロマは無力です。ヒスタミンは、局所で毛細血管の内皮にある上記の受容体にはまると、C線維を介して中枢に痒みとして刺激が伝わります。以前は、痛覚末端が軽く刺激を受けるために、痛みではなく痒みとして伝わるとされていましたが、今は、この説は誤りとされています。

 

ヒスタミンが、胃内のH2受容体にはまると、胃酸が過度に分泌されて自分の胃を溶かす胃潰瘍という症状に発展します。ヒスタミンは、常に悪者扱いされてしまいそうですが、この生理活性物質は、脳内ではH3受容体にはまり、私たちを含めた動物が、眠らずに起きて活動をできる状態に保つ大変重要で有用な役目を担っています。

 

ですから、抗ヒスタミン剤を飲んで、体内の各受容体がブロックされると、この脳内の受容体もブロックされてしまうので、シャキッと起きていることができず、運転中などにマイクロスリープというような大変こわい現象が起ります。これは、睡眠薬のように、長時間の安眠を得られるような作用は期待できません。近年は眠くならない抗ヒスタミン剤なども開発されています。

 

正しい精油の抗掻痒作用も大変強力です。上手に利用すると、皮膚疾患で悩む犬では、ステロイドの量や投与回数を減らしたりすることができますので、医原性(動物病院にかかることが原因)のクッシング病になってしまうのを防ぐことが可能です。そういう面で、アロマの利用価値が大いにあるかと思います。

 

ヒスタミンが関係しない痒みの原因に、TRP (transient receptor potential protein)という受容体が関与するものもあり、近年、大変注目されています。この受容体に類するものは、大変種類も多く、痒みにとどまらず、その作用は複雑です。アロマを利用できそうなほんの1例ですが、お風呂上がりに身体の一部が、とても痒く感じられることがありますね。これは、温度変化の刺激で、このTRP受容体の一種が活性化されて、痒みが生じる現象とされています。ヒスタミンは関係しません。この痒みをとるには、冷水をかけて温度を下げればいいのですが、夏場はそれで良いかも知れません。しかし冬場などは、冷水をかけたり、かぶったりすると、心臓に悪い影響が出るとも限りませんので、そんな時にはアロマの力を借りることが可能です。良質のペパーミントやユーカリの精油を適宜薄めて塗布すると、冷感が得られますので、痒みを鎮めることが可能だと言われています。ただし、ここで注意をしておかなければならないのは、様々な製品にも利用がされているペパーミント精油に関して、安全性データが完全ではないという事実です。現在は、化粧品なども動物実験ができない時代です。精油の毒性や感作性に関する動物実験も容易に実施することができません。アロマセラピーで繁用されるペパーミント精油ですが、その殆どに偽和があることも報告されています。用心して、控えめ控えめに使うことが肝要かと思います。

 

ネットを検索すると、アロマ関連サイトで、多くのレシピが紹介されていますが、殆どの場合は、ある精油の効果/効能が一般化されて、レシピがつくられています。精油は、ご存知のように偽和がなくてもボトルごとに、その成分が異なります。例えば、真正ラベンダーでも、生育環境が変わると酢酸リナリルがゼロという場合も報告されているほどなのです。場合によっては、真正ラベンダーと言ってもカンファーが数%含まれるものも存在します。ですから、すべての真正ラベンダーに鎮静作用があると考えるのは大変リスクがあるのです。

 

著名なアロマセラピストがレシピをネットで公開したとしましょう。その情報を得た一般の方々は、近くのアロマショップに精油を買いに走るでしょう。市販の精油の殆どに人工的な手が加わっていると良識ある分析化学者たちが公言なさっています。偽和のある精油で、そのレシピを試したら何が起るでしょうか。ラベンダー精油1つを例にとっても、ジヒドロリナロールが入っていると感作性が急上昇するとの報告もなされています。

 

もし、ネットで公開されているレシピをご覧になりましたら、レシピを公開なさった方が何らかの方法でレシピに使う精油の成分分析をなさっているかを確かめましょう。レシピに使われている精油には、安全性データがありますでしょうか。これも確認いたしましょう。アロマ製品に無料で添付されてくる分析データは、しっかりとその分析法が明記されてない限り、信頼をすることはできません。

 

日本アニマルアロマセラピー協会では、上記の理由から、レシピだけを公開することはいたしません。痴呆症に有効なブレンドがネットで公開され、テレビ、新聞で紹介されたことから、町のアロマショップから関連する精油の製品が消えました。日夜、そのブレンドを患者さんが利用することで、一緒に暮らすネコちゃんたちに実際の被害が出始めています。患者さんご自身でも、喉がヒリヒリするなどの副作用が出始めています。精油は、現在ではすべてが雑貨扱いですので、使用者は自己責任で使用しなくてはなりません。売る側にとっては、何ともありがたい商品ですね。

 

どうぞ、アロマを利用なさろうという方々は、リスクがあることを認識なさって下さい。周囲にペットが一緒に暮らしていたら、動物たちへの配慮を忘れないで下さい。

2014年10月20日 (月)

P糖タンパク

前にお話しさせていただきました薬剤と精油の相互作用のところで触れた一部の降圧剤(高血圧の患者さんが血圧を下げるために服用する薬剤)との関係で、グレープフルーツジュースに含まれる精油成分(フロクマリンの1種)に関する補足です。

 

肝臓という代謝(解毒)工場において、薬剤の代謝にかかわる酵素と、体内に侵入した精油成分が、同じ酵素で代謝されるとすると、互いに酵素の奪い合いとなり、お互いに血中濃度が予定通りに低下せず、酵素の阻害が生じ、有害事象の原因になったりするわけですが、このフロクマリンは、もう1つ重要な働きをするために、薬剤との相互作用が起ることが判明しています。

 

アロマを勉強した方で、P糖タンパクという用語を学習した方は殆どおられないかと思います。このタンパク質は、体内のあちこちで発現していますが、私たちが病気になった時に服用する薬剤も、生体にとっては異物ですので、私たちの身体では、薬剤が消化管からすぐに血流に入らないように、ポンプの役目を担当し、体内に侵入したばかりの異物である薬剤成分を、どんどんと腸内に戻して、排泄を促す働きをしています。グレープフルーツに含まれるフロクマリンの1種が、このP糖タンパクの働きを阻害することが判明しています。何が起るでしょうか。

 

くみ出される薬剤の量が減ってしまいますので、薬剤は予定以上に体内に吸収され、血流に乗って目的地に向かいます。そう、薬剤の血中濃度が推定以上に高くなってしまう現象が起るのです。降圧剤の場合は、血圧が下がり過ぎて起きていられなくなります。たった一杯のジュースに含まれる精油成分は、極めて微量です。それでも、このような現象が起こり得るのです。

 

このP糖タンパクにもいろいろな種類があり、薬剤の耐性にも関係するものがあります。ガンの組織で細胞内にこのタンパクが発現すると、抗ガン剤が組織に届く前に押し出されてしまいますので、せっかく投与した薬剤が効かなくなってしまう現象が起ります。消化管では、上記のような精油成分が、このポンプの役目を阻害することが判明していますので、何とか、ガンの組織で、このタンパクの働きを抑える成分が探索できれば、副作用の強い薬剤の量を減らしたり、薬を効き易くしたりすることができるかも知れませんね。アロマセラピーがらみで、これからの研究が期待される分野です。

 

ちなみに、このP糖タンパクは、異物となる化学物質を押し出すものばかりでなく、種類によっては、大切な薬剤を血流に載せる役目を担うものもあり、その作用は大変複雑です。精油は人工的に高濃度に濃縮した有機化合物です。偽和の有無にかかわらず、大変強力な生理活性作用があることが判明しています。現時点では、どなたでも雑貨として販売/購入できますので、精油が一体どういうものなのかという理解をせずに、気軽に利用していると、思わぬ落とし穴があるということを知らなくてはなりません。精油を利用する補完代替療法は、決して一口に安全な代替療法であるとは言えません。特に動物では、動物種ごとに肝臓の機能が異なりますので、命にかかわる事象がいとも簡単に起こり得るのです。

 

精油を日常の生活に利用なさっておられる方々へ真摯なお願いです。共に暮らす動物たちへの配慮を忘れないで下さい。

精油成分は本当に健康な人の皮膚から吸収されるでしょうか。

あくまでも、条件は健康人の通常状態での皮膚のお話です。Lis-Balchinさんは、「アロマセラピーサイエンス」の中で、ピコグラム(1ピコグラムは1兆分の1グラム)単位の成分しか皮膚からは吸収されないと述べています。


精油の皮膚浸透性に関する論文は数多くありますが、どうぞ読まれて下さい。まず、第一に、実験に使われた精油に偽和があるものか否か、成分が自然のものか、合成香料かは、論文を読んだだけでは不明のことが殆どです。

皮膚に塗布して、血液検体中に成分が検出されたとする実験では、殆どの場合、精油の香りが呼吸器系から吸収されるのをブロックしておりません。宇宙服のような装置で蒸発する香気成分を鼻や口から肺に入らないようにしないと、正確な実験はできません。 香りが外に漏れないように精油を塗布して、塗布した局所にプラスチックやラップでカバーをし、密封した実験がありますが、皮膚は呼吸をしており、カバーをすることで皮膚は膨潤し、その時点で経皮吸収性は高まりますので、通常状態の皮膚の実験ではなくなってしまいます。 動物や人の切除した皮膚を用いたin vitro(試験管内)の実験では、生きた皮膚が様々な反応をすることが無視されています。In vitroの実験結果をin vivoの作用としてすぐに結論づけられない由縁です。


精油成分が、経皮吸収されるには、毛孔や汗孔からの経付属器官経路と、角質層を経る経路がありますが、いずれも、真皮以下の組織に分布する血管まで移行する必要があります。人の皮膚では、前腕部の内側でも角質層は約14層にものぼります。脂溶性が高く分子量の小さい化学物質は、その辺までは吸収されやすいでしょう。しかし、問題はその先にあります。角質細胞間隙にある脂質(セラミドやコレステロール)は、親水基と疎水基が交互に重なるラメラ構造になっています。下層にいくと、脂溶性が低くなるために、そこを通過するには、ある程度の脂溶性と親水性を持ち合わせていないと、成分は無事に血管まで到達することができません。そうなると、成分自体に細胞傷害性があって、周囲の組織を傷つけるか、あるいは脂溶性/疎水性の両方をもつ成分となると、第1級アルコール類など、非常に限られてきますね。医薬用クリームなどの皮膚浸透性を高めるために使われている精油成分があります。極めて細胞傷害性が強いものです。 皮膚が少しでも膨潤したり炎症があると、顕微鏡的にはとんでもない大穴が開いており、毛細血管も露出したりしていることもありますので、精油成分はあっという間に血中に吸収されていくでしょう。 アロママッサージなどで、精油成分が体内に入るのは、その殆どが呼吸器系を介して吸収されるものだと考えた方が理にかなっているのではないでしょうか。


正確な皮膚浸透実験を行ったり、これぞという文献をお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非ともご教示いただけましたら幸いです。

2014年10月19日 (日)

精油の抗炎症作用

アロマを勉強なさった方々で、抗炎症作用を持つ精油に関して、そのメカニズムを学習なさった方は本当に少ないと感じています。


ティートゥリー精油は、動物にとっては中枢神経毒性が懸念されますので、利用することはいたしませんが、主成分の1つであるテルピネン4オールには、腫瘍壊死因子である
TNF-αやインタロイキン、プロスタグランジンなど、炎症性サイトカイン(生理活性物質)の産生を抑制する作用が動物実験で報告されています。シソハイドロゾルの主成分であるペリルアルデヒドの動物実験でも、同様の報告がなされています。これらの炎症性サイトカインが体内でつくられるのを阻害できれば、炎症が消失に向かいます。


抗炎症作用で、もう1つ、とても強力な作用が報告されており、これには、何度も出てきておりますが、体内の酵素に対して精油成分が直接作用を及ぼすことで、抗炎症作用が発現します。コルチコステロイドを投与して炎症をおさめる療法は有名ですが、この際にも酵素が関係します。「アラキドン酸カスケード」と呼ばれる炎症が悪化する機序があり、アラキドン酸にリポキシゲナーゼやシクロオキシゲナーゼという大変重要な酵素が働いて、上記の炎症性のサイトカインが産生されていきます。ステロイドでこの2つの酵素がブロックされてしまうので、炎症がおさまっていきます。


フランキンセンス精油の中に含まれるボスウェリア酸に、上記のリポキシゲナーゼという酵素をブロックする働きがあることが報告されており、これがフランキンセンス精油などが受け持つ抗炎症作用のからくりだと思われて間違いないと思います。(しかしながら、精油分析のスペシャリストであるDr.Pappasが水蒸気蒸留のフランキンセンス精油には、分子量の重いこの物質は入らないとおっしゃっていることから、近年注目されている種々の精油成分のシクロオキシゲナーゼ阻害の作用がそのメカニズムを担っているのかも知れません。いずれにしても、精油における実験で、
試アロマ製品の偽和の有無を判定することがむずかしので、安易に結論を出すことはできないように思われます)ボスフェリア酸の5-リポキシゲナーゼ阻害、あるいはシクロオキシゲナーゼ阻害の機序によるものとしても、ステロイドのように長時間の作用は期待できません。しかしながら、経験上、短期的には精油でもステロイドに匹敵する抗炎症作用があるように感じています。また、近年は、ヒアルロニダーゼの阻害作用が皮膚の抗炎症作用の指標として注目を集めています。


炎症という現象は、生体に有害な刺激(化学的刺激、病原体の感染など)が加わると、それに対して体内の組織が示す防御反応ですが、上記の炎症性サイトカインなどが局所で産生されると、白血球の仲間である好中球のスピードが落ちて、局所に集積/接着する現象が起ることになります。炎症が起きた局所は、赤くなり、熱をもったり、腫れたりします。ゼラニウム精油には、この好中球が局所に集積する現象を低減する作用があることが報告されていますので、本物のゼラニウムが入手できるのであれば、シャンプーなどにも添加すると効果が期待できるかと思います。「アロマセラピーサイエンス」を読まれたことがある方はご存知かと思いますが、ゼラニウム精油は本物より、偽和の精油の方が強い抗菌力を示すそうです。合成のゲラニオールが添加されるためでしょう。


精油の中には、すばらしい抗炎症作用を有するものや、創傷の治癒を早める作用をするものがあります。ちょっとした傷にブレンドオイルなどを塗布してみようと思われる方も多いかと思いますが、決して刺し傷などの深い傷に精油を使ってはなりません。表面で傷が治ったようにみえて、中で嫌気性菌が繁殖してしまうリスクがあるためです。動物に噛まれた傷、釘を踏んでしまった時、トゲをさしてしまった時の創傷にアロマは禁忌です。

聞いたことがない!習っていない!証拠がない!

それでは許されないのが、精油と服用している、あるいは何らかのルートで投与されている薬剤との相互作用です。米国のMaryland大学で、ハーブと薬剤とのかなり詳しい相互作用の注意報が出ています。

http://umm.edu/health/medical/altmed


6番目の
"Herb Interaction;ハーブとの相互作用"の項をクリックしてみて下さい。たくさんのハーブに関する注意が記載されています。

しかしながら、このハーブのリストの中にあるように、ユーカリでは精油のことについて書かれていますね。Maryland大学でさえ、ハーブの成分と精油の成分が混同されてしまっています。ハーブと薬剤の相互作用は、互いに関係する代謝酵素を阻害したり、誘導したりと、どんな現象が実際に起るのかは、予測されにくいところがあり、まだまだ研究半ばです。ご存知のように、ハーブは概ねハーブティーとして利用されることが多いですので、お湯に溶ける水溶性成分が主体の薬理作用が期待されています。精油は当然ながら、各成分の疎水性尺度によって水に溶ける度合いが規制されますのが、(水とよく混じる)第一級アルコール類を除き、大部分の成分は脂溶性が強い性質を持っていますので、なかなかハーブティーの成分として濃厚に含まれることはありません。


ハーブティーでも良い香りがするものも多くありますが、それは精油成分が極微量でもヒトの鼻で感知できますので、立ち上る精油成分がハーブティーの香りを決定しています。しかしながら、ハーブティーは、殆どの場合、生か乾燥させた植物素材をハーブティーとして利用しますが、精油はその前に、極めて特殊で人工的な過程を経て利用されます。人の手によって極度に濃縮された有機化合物だということです。生の植物が放つ香りとは、比べものにならないくらい、成分が濃縮されているという意味です。


今、アロマ関連書籍に記載されている各精油の効果/効能をご覧になって下さい。その情報がどこから転記されたものかを調べてみて下さい。昔から、ハーブの効果/効能とされている植物の記録が、そのまま精油に置き換えられていることが殆どなのです。昔の著名な人々が、ハーブティーと精油の関係を理解することなく、そのままハーブの効果/効能をコピペしてアロマの教科書にしてしまったので、それがそのまま、現代もアロマ教育機関でまるでバイブルのように言い伝えられているのが現状なのです。


薬剤の相互作用は、成分の物理学的な変化や、腸内細菌叢への影響、服用した際の消化管運動の変化、消化管内
pH値への影響、トランスポータ(体内に吸収/排出する役目を担うタンパク質)に対する影響、などなど代謝酵素ばかりが関係する訳ではありませんので、それは専門書籍にゆずることにしたいと思います。アロマを利用する際の薬物との相互作用に関しましては、一般のアロマセラピーで何らかのルートで体内に入った精油成分が直面するのは、肝臓という解毒工場(解毒と代謝という用語は、厳密には異なります。解毒は、Xenobioticsが代謝酵素の作用で物質が変化する度に、毒性が低くなる時に使われる用語で専門用語ではありません)での薬剤との遭遇です。精油では、まだ短期的な作用の研究しか殆ど行われておりませんので、多くの場合、服用薬剤と同じ酵素で代謝される場合、酵素を奪い合う現象がおきて、これが当該酵素の阻害という形で現れます。


通常、医療の現場で投与される薬剤は、当該薬剤が関係する代謝酵素は詳細に調べられており、体外に排出される時間なども測られています。薬剤としての有効血中濃度を保てるように、8時間おきとか、1日1回とか、投与間隔が決められています。そこでアロマセラピーを行って精油成分が体内に入ってくると、概ね短期的には代謝酵素の奪い合いになり、服用した薬剤は代謝が遅くなり、血中濃度が予定通り下がってくれません。そのうち、次の服用時間がくると、患者さんは同じ薬剤を飲んでしまいます。何が起るでしょうか。体内での薬剤の量がとんでもなく高くなってしまう現象が起ります。副作用の強い薬剤であったらなおさら大変です。


植物の持つ成分の中には、これとは逆に、ある代謝酵素をたくさん増やしてしまうものがあります。喘息で発作を予防するために飲む薬剤と一緒に、セントジョーンズワートという「鬱病」に人気のハーブティーを利用していると、喘息の発作を軽減するために服用した薬剤を、すぐさま代謝してしまうので、有効血中濃度に達することができず、発作がおさまらずに命にかかわる事象が起ることにもなりかねません。


ハーブの成分はお湯に溶かす程度ですから、精油のように
100%が香気成分でできている高濃度有機化合物とは比較にならないほどうすい成分です。それでさえ、上記のような酵素に対する影響を及ぼすのです。精油と薬剤との相互作用は、研究されはじまったばかりで、アロマ関連書籍で触れられている機会は殆どありません。このことを認識せずにアロマを利用することは、身体が小さい動物にとっても大変なリスクがあるということです。


アロマ関連の情報を流されている方々で、アロマの知識のある医療家に問い合わせをしたけれど、相互作用は心配ないと言われたとおっしゃる方がいらっしゃいます。その問い合わせをなさった医療家/医師の方々には、本当に精油の正しい情報が渡っていますでしょうか。大変疑問に思います。

メントール入りタバコを吸っていると禁煙しずらい!

アロマの教育で、一番すっぽ抜けてしまっていることに、薬剤との相互作用があります。副作用の強い薬剤を精油とうまく組み合わせることで、薬剤の生物学的利用能を上昇させられますので、投与量を低減することで、有害作用の発現を抑えることができるようになるかも知れません。しかし、反対に、薬効が出過ぎて、例えば降圧剤などでは、血圧が下がり過ぎてしまうという現象も起ります。降圧剤の中にはグレープフルーツジュースを一緒に摂取することを禁止している薬剤がありますね。その犯人が、フロクマリンの1種であることも解明されています。様々な柑橘系の精油に立派に含まれている成分です。このフロクマリンは、代謝酵素ばかりでなく、消化管内のトランスポータにも作用します。

私どもでは、何年も前から、タバコのニコチンとメントールが体内の代謝酵素がらみで相互作用を示すことを受講生にお伝えしております。古いニュースですが、昨年の夏、米国の Wall Street Journal誌がやっと次のような記事を発表していますので、ご参考に読んでいただければ、少しは精油成分と他のXenobioticsとの相互作用の一端が垣間みれるかと思います。

http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424127887323689904578624622721430746

これなどは、精油と他の化学物質との相互作用のほんの一例でしかありません。これに似た現象が、私たちの周囲でたくさん起っているのです。飲酒とアロママッサージなども同じく、代謝酵素がからんだ相互作用です。
アロマの資格を有する医療関係者の方々へ真摯なお願いです。アロマセラピーは肝臓での代謝の勉強なしには医療で利用するには、あまりにもリスクが大き過ぎます。カマズレンやαビサボロールなどは、CYP1A2、2C9、2D6、3A4などと相互作用を示すという報告もなされています。各種フランキンセンス精油も、CYP1A2、2C8、2C19、2D6、3A4などを阻害する報告がなされています。ご存知のように、CYP3A4は、薬剤の代謝酵素としては、最も大切な酵素の1つに挙げられます。それが何を意味するかは医療関係者であれば、ご理解いただけるかと思います。今、巷で大流行の痴呆症を予防するというローズマリー精油の主成分であるユーカリプトール( 1,8 シネオール)もCYP3A4で代謝されることが判明しています。細胞傷害性もある成分で、皮膚浸透性が高まるという理由で、医療用のクリームに添加されています。鎮静作用が期待されるということで人気のあるバレリアン精油の成分は、肝臓II相のUGT1A1や2B7を阻害すると言われています。医療現場でアロマセラピーを取り入れようとなさる方々には、可能な限りの薬剤/精油相互作用の情報を得られた上で施術をなさっていただきたいと思います。強い副作用がみられた方々にアロマの施術をしていなかったか、是非とも調べていただきたいと願っています。

精油の鎮静作用

学術的に精油の鎮静作用がなぜ得られるかという情報は、種々の報告がなされていますが、研究に使用した精油の質を評価できない論文も数多く、科学的な証拠(エビデンス)が根底から崩れることが多々あるかと思います。ここでは、一般的な真正ラベンダー精油のリナロールなどが、血中に吸収された場合にみられる最も可能性が高い理論をご紹介したいと思います。

 

アロマセラピストの殆どが、精油がなぜ効くのか、という情報をお持ちではありません。ひたすら、xxの精油がxxに効くという情報をたたき込まれているように感じます。「血液脳関門」という用語する初耳の方が多く、アロマ教育の根本が抜け落ちていることに、怒りさえ覚えます。

 

鎮静作用というのは、副交感神経が優位になり、中枢神経が抑制されることを意味しますので、人での心理的なプラセボ効果を除外しますが、生理学的には精油成分が強固な「血液脳関門」を突破して、中枢神経領域に入り込まなくてはなりません。大脳は、私達の生命を司る中枢ですから、生体外異物のXenobioticsが簡単に侵入されると影響があまりに大きいですので、極力、いろいろな化学物質が脳内に入らないように守っている砦のような機構です。脳炎になると、薬を目的地まで届けるのに、大変な苦労を伴います。

 

人の場合、アロマに興味があると、アロマショップなどで事前の情報が入りますので、「ラベンダー精油は不眠症に大変効果的」と言われて精油を購入すると、それらしき香りのする香料であっても、暗示効果でグーグーと寝てしまう方がいます。しかし、動物では、事前に暗示を与えることができませんので、これにはしっかりとした科学的な理由なければ寝てくれません。

 

血液脳関門のお話に戻ります。その強固な関門を、精油成分の中には、いとも簡単に突破するℓ-リナロールのような物質があります。皆さんは、血圧を下げる作用があると言って、GABA(キャバ)が含まれる健康食品なるものを試された方もおられるでしょう。このGABAはγアミノ酪酸(ガンマアミノ酪酸)という物質で、生体内で産生される生理活性物質の1つです。それも、神経の興奮を収めるための抑制性神経伝達物質です。GABA受容体には何種類かあるのですが、この受容体にGABAがはまると、イオンチャンネルが開通し、塩素のマイナスイオンが、中枢に流れ込み電気的に興奮している神経を抑制するシステムになっています。当然、GABA受容体が活性化するということなのですが、その前に、活性化されるのに十分な理由があり、そこで体内の酵素が関係してきます。Rリナロール(アロマ界では、ℓ-リナロールと呼ばれる光学的に左旋性のリナロールです)が、キャバトランスアミナーゼというGABAの分解酵素を阻害するために、処理されないGABAが脳内で増えるために、次々に専用の受容体に結合し、中枢に塩素のマイナスイオンが大量に流れ込むという現象が起ります。これが鎮静作用のメカニズムとされています。

 

GABA受容体には、側面にベンゾジアゼピンという薬剤がはまる部位を持つものがあります。この薬剤は、トランキライザーとして、睡眠導入剤として、様々な種類がありますが、何らかの理由により、病院でこの薬剤を処方されている方がたまたまℓ-リナロールを多く含む真正ラベンダーなどの精油に曝露されると、安定剤なのに、睡眠薬を飲まされたように起きていられない現象がみられ、あるいは睡眠薬と同時に真正ラベンダー精油を利用すると、睡眠時間が延長し、翌朝仕事に遅刻してしまうというような事態になりかねません。この受容体にGABAとベンゾジアゼンピンが同時に結合すると、通常より大変太いイオンチャンネルが開くことが原因です。

 

この他に、睡眠薬が効き過ぎてしまう理由には、やはり代謝酵素に影響する精油の作用がありますので、このメカニズムを理解するには、しっかりと肝臓の機能を勉強しなければなりません。睡眠薬がちょうど良い時間に血中濃度が下がるように処方されているのに、精油を使っていると、代謝酵素が働かずに、いつまでも睡眠薬の成分が体内から排泄されない事象が起ります。全世界のアロマ教育で、一番すっぽ抜けてしまっている情報ではないかと思っています。

 

余談ですが、GABAを含む健康食品がありますが、口からGABAを摂取しても、外からもってきたGABAは、血液脳関門を突破することができませんから、脳内のGABAは食事で増えるということはありません。犬も猫もサプリメントが大流行りですが、特に動物のサプリは注意が必要です。私達は、獣医学的な理由がない限り、正しいごはんを与えていれば、乳酸菌製剤以外のサプリは不要ではないかと考えています。

 

精油は利点ばかりが強調されますが、医療関係者の皆様、どうぞ精油の薬剤との相互作用を軽視なさらないで下さい。ハーブや漢方薬以上に高度に濃縮された有機化合物です。精油はXenobioticsであるということを認識していただきたいと思います。

 

私どもでは、産婦人科でアロマセラピーの施術を行っている病院にも情報をご提供し、妊産婦さんや新生児への精油のリスクをご説明させていただいております。

2014年10月17日 (金)

ペットに対するアロマセラピーの歴史

私たちと共に暮らすペットのアロマセラピーの幕開けは、1993年、フランスを拠点に活躍している自然療法士のネリー・グロジャンNelly Grosjeanが、フランス語の著書を出版したのが最初でした。


翌年の1994年に「Veterinary Aromatherapy」(動物のアロマセラピー)として英訳がなされ、全世界に小動物のアロマセラピーが紹介されるきっかけとなりました。1999年には、英国の獣医師であるBruce Fogleが「Natural Cat Care」「Natural Dog Care」という著書を出版し、翌年には和訳本が出版され、アロマセラピーを含むコンパニオンアニマルの補完代替医療(CAM)の本が、日本でも容易に入手できる時代がやってきました(このNatural Cat Careの和訳本は、私が監訳を担当させていただきました)。


2000年には、ESP社(Essential Science Publishing;ヤングリヴィング社が薬事法を逃れるための隠れ蓑とした出版社)から、まるでメディカルアロマの神髄を謳ったような精油の使い方のDesk Referenceが英語で出版され、馬やイヌ・ネコにおけるアロマセラピーのレシピなどがビデオでも紹介されておりました。その後数年間に、ヒトの医療分野での精油の効果が発表され続け、それが小動物にもそのまま応用されてきた歴史があります。


しかし、上記の書物などに書かれているレシピは、植物食である馬に対する精油の使い方が基本にあり、時には安全性データを欠く精油を含むヒト用のレシピがそのままイヌ・ネコに利用されている場合も見うけられ、これら精油の効果/効能の根拠は何も無く、ただ希釈すれば安全だろうという考えだけで文書化されてしまったのです。


ご存知のように、イヌは雑食性、ネコは肉食性であり、食性が違えば化学物質の代謝や分解能力には差異があって当然です。一般的に、植物食動物の方が多くの代謝酵素を持ち、逆に肉食動物は代謝酵素が少なく、化学物質の代謝能力は低いとされています。猫は犬などの1/61/10の解毒能力しかないとも発表されています。ですから、多くの化学物質で構成される精油を、ネコがうまく代謝出来ないということはおおいに考えられる事なのですが、この事実が判明するまでには、大変時間がかかってしまいました。この間、精油を使ったアロマセラピーで体調を崩したネコが多くいたことでしょう。


20141月、米国Animal Poison Control Centerより、過去10年間の犬猫におけるティートゥリー精油の事故をまとめた論文が報告されました。有害事象を起こした精油量は0.1mL85mLと報告されており、0.1mLは1滴を0.05mLとしても2滴ほどの量に相当します。ユーカリ精油数滴では、猫に害はないと主張するロバート・ティスランド氏の考えは、明らかに誤りではないかと考えます。実際に、ネコの呼吸器のトラブルをユーカリ精油で治そうと試みた飼い主さんが、あわてて私どものところに電話をかけてこられました。倒れて痙攣しているとの報告です。すぐに病院へとアドバイスをいたしました。結果を必ず知らせて下さるようにお約束をしましたが、こちらから連絡をとってもお返事がありません。今年3月末の事象でした。


*スーザン・カティー とクリスティン・レイ・ベル

2001年に、スーザン・カティー Suzanne Cattyが、ハイドロゾル(フローラルウォータ)に関して「The Next Aromatherapy」(和訳:次世代のアロマセラピー)と題する書籍を出版したのとほぼ同時期に、 クリスティン・レイ・ベル Kristen Leigh Bellが「Holistic Aromatherapy For Animals」(和訳:愛しのペットアロマセラピー)を著し、ネコにおける精油の使用に声を大にしてアロマセラピストとして警鐘を鳴らしたのでした。


しかし、残念ながらSuzanne Catty女史も、Kristen Leigh Bell女史も、精油やハイドロゾルの業界のしくみを十分に理解しているとは思えない部分もあり、彼女たちの著書をそのまま教科書がわりに利用することは、リスクを伴う可能性があります。例えば、良質のラベンダーハイドロゾルは、酸性であると主張していますが、実際には決して酸性ばかりを示すわけではなく、植物は、育つ土壌や育つ環境中や蒸留に使用する水のpHが反映され、アルカリ性を示す天然のラベンダーハイドロゾルも存在するのです。


Susan Catty女史の著書がきっかけで、一般的にラベンダーのハイドロゾルは一定の酸性度の範囲になると信じられており、その為、業者は製品をその範囲にするために、クエン酸でpHの微調整をし、防腐剤(ソルビン酸カリウムなど)を添加するのが常だとも言われています。精油成分に関して、ISOの国際基準が定められていることも、不正行為を助長する一因になっていることをMaria Lis-Balchinも著書である「アロマセラピーサイエンス」の中で早くから指摘しています。


*ネコとアロマ

1970年代から医学的な代謝に関する報告で、ネコは特異な代謝機構であり、一部の薬剤は解毒できないということが言われ始めましたが、1975年には、Schillings R.T.氏らによる反論が展開されていた時期もあったりしました。 私が学生で実習をしていた昭和40年頃の動物病院では、危険回避のために、大変残酷ですが、無麻酔でネコの避妊手術をしておりました。


2000年に、ネコにおいて脂溶性物質の代謝酵素(グルクロン酸転移酵素)を発現する遺伝子の異常が指摘されるようになり、同様に肉食性の強いフェレットなどでも、肝臓の代謝能力(グルクロン酸抱合力)が低いことが2001年に報告されました。フェレットでは、この代謝能力に性差があり、雌の方が高いリスクを負っています。ネコでもリスクに性差があります。動物ごとにグルクロン酸抱合による代謝・解毒の能力が非常に異なり、ネコ、ライオン、ヒョウ、オオヤマネコ、ジャコウネコやジェネットの仲間は勿論のこと、一部のラットでもネコ同様に非常にグルクロン酸抱合能力の劣る種類のあることなどが報告されています。

2011年には、肉食動物の種ごとの詳しい遺伝子検査も実施され、翌年には上記のイエネコのほか、ベンガルヤマネコ、ピューマ、フロリダピューマ、チータ、カナダオオヤマネコ、ボブキャット、ジェフロイキャットなど、非常に多くのネコ科の動物で、グルクロン酸転移酵素に関する遺伝子に同様の変異があることが判明し、ネコ類以外にも、特にカッショクハイエナとキタゾウアザラシで、イエネコ同様、当該酵素をつくる指令を出す遺伝子の末端に大きな変異があり、特定の化学物質の代謝に欠かせない酵素が活性化されないことなども解明されたのでした。ごく最近の研究発表なので、まだまだ、獣医療関係者に、この情報が伝わっておりません。


残念なことに、ペットとして我々と暮らすネコやフェレットの低い代謝能力が、アロマセラピーで使用される精油と関係があるということは、長い間気付かれなかったのです。英国で動物のアロマセラピースクールなども経営するアロマセラピスト、Caroline Ingrahamの著書(Animal Aromatics Workbook;自費出版)にも、ネコの代謝のことは触れられてはおりますが、直接的な塗布と経口投与は危険だというだけで、吸引は逃げ道さえ確保しておけば安全だと記されています。彼女にメールを送り、ネコでのリスクを伝えました。動物が自分で必要とする香りを選ぶという理論は、大変疑問に思います。遺伝子の異常を伝えると"Thank you!"というメールが届き、その後に連絡が来ることはありませんでした。日本で講演をすることに、大変興味を持たれておりましたが、お断りしました。


動物ごとに代謝能力が異なるということを理解するのは、動物のアロマセラピーを行う上で、最も大切な事項の1つであると考えています。良識ある精油分析化学者たちが、口を揃えて市販の精油の大部分に偽和が横行していると公言している昨今、ペットのアロマセラピーが日本でも大流行しています。特にネコは、お線香の煙に含まれる香料を吸入しただけでも嘔吐をする個体があるように、植物に含まれる脂溶性成分に対しては、非常に抵抗力がないのです。


治療グレードの品質を持つ精油であれば危険はないとおっしゃる獣医師や医師がいます。精油の分類で、「治療グレード」という用語は単なる造語であり、全く意味をなしません。また、ケモタイプ精油であればネコに安全に利用できると信じている獣医師もいます。メディカルアロマを標榜する獣医療関係者は、精油の分析法を実際に体験なさったことがありますか。生のデータをご覧になったことがありますか。業者が無料で付けてくる分析データを信じる理由はどこにありますか。


ペットの飼い主のみなさん、それでも愛猫/愛犬をアロマセラピーで癒してあげたいと思われますか?

2014年10月16日 (木)

ローズ精油のこと

バラの香りを閉じ込めたローズ精油は大変高価な精油の1つですが、偽和の懸念は常に念頭においておかなければならないものの1つです。このことはローズ精油に限ったことではありませんが、特に高価な製品ほどその確率が高くなるとされています。

 

ブルガリアのローズ精油は大変有名ですが、国立バラ研究所の証明書付き製品という精油がよくコマーシャルで流されます。この研究所は確かに1948年、国立の研究所として設立されましたが、ブルガリア大使館にも確認いたしましたが、この組織は、1997年に私立の会社組織になっております。それでも、コマーシャルには、いまだに国立の組織であるように謳われており、消費者にとっては大変紛らわしい情報ではないかと‥。

アロマセラピーに公的保険は本当に適用されるでしょうか。

Alternative Medicineという語を「代替医療」という日本語に訳出されたDr.廣瀬輝夫。ニューヨークの医科大学で教授をつとめておられたドクターです。「代替医療のすすめ」という本を書かれたことでも有名です。退職後、世界中を旅して、各国の医療事情/代替医療を調査してこられてレポートを書かれていますが、フランスやベルギーの医療現場では、アロマセラピー(アロマテラピー)のアの字も登場いたしません。


アロマセラピストの方達が、フランスやベルギーでは、アロマが保険の対象になっていると習ったということをよく耳にします。本当ですか?アロマ関連の記事を書かれている日本の医師の中にも、そのような情報を記載されている方がいらっしゃるようです。確認をなさいましたか?


フランス大使館にこの件について正式に質問をしたことがございます。なぜ、代替医療に国の公的保険で費用を負担しなければいけませんか?と、逆に質問されてしまいました。私どもの日本アニマルアロマセラピー協会には、ベルギー人のアロマセラピストで私どものコースを通信で受講なさった方がおられます。ベルギーでの保険適用について質問をしますと、「断じてNoで、Never」だという答えが返ってきます。そう言えば、自国のフランスで活躍できない方々が、規制のゆるいベルギーで精油ビジネスを展開したり、教育機関を開設したり、日本では大変人気の製品のようですが、ベルギーの彼女のアロマセラピスト仲間は、そのような精油は知らない人が多い上、使うこともないとのこと。日本で言われていることと、あまりに異なるので、大変複雑な気持ちです。アロマ教育に携わる獣医師の中には、ここのケモタイプ精油(この精油の名称は単に商標登録されたもので、決して高品質の精油の証ではありません)であればネコに安全だという情報を流しておられる方々がいらっしゃいます。米国の獣医師で、ある企業の治療グレード(精油にこのようなグレードは存在しません)の精油であればネコに安全と謳っているのと同レベルではないでしょうか。そういう獣医師の皆様には、是非とも、ネコの代謝酵素に関する遺伝子情報を得ていただきたいと思います。


アロマセラピーの保険適用に話をもどしますと、英国では、一時診療でかかる病院は指定されてしまい、日本のように好きな病院を受診することができません。その一時診療で、「アロマセラピー」が必要と判断されれば、保険が適用されることにはなっているようですが、いずれの国も保険はパンク寸前のようで、看護師さんたちが自腹を切ってセラピーをして下さることは稀にあるようですが、希望者は自費で町のセラピストにお願いするしか方法がないとのこと。


英国以外に公的保険でアロマセラピーがカバーされるという情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非とも情報をご提供いただきたいと思います。

真正ラベンダー精油に鎮静効果があるとは限らない

Aromatherapy Scienceの著者であるMaria Lis-Balchinさんは、ゼラニウムの植物/精油研究でも有名ですが、彼女はLavenderと題する書籍も著しています。


ご存知のようにラベンダーは非常に交雑がすすんでいる植物で、学術的な分類を試みているケンブリッジ大学でも、未だ再調査中で、正確な分類をするには至っていないようです。歴史上、初めてラベンダー属植物の専門書としての記述がなされたのが1780年のこと。近年、真正ラベンダー (L.angustifolia)の品種改良に取り組んだのは、タスマニアのラベンダー精油ビジネスに関わったCharles Denny氏でした。彼は1921年から、11年の歳月をかけて2500の遺伝子型を持つ L.angustifoliaから487の遺伝子型を選び出し、高品質で収量の多い13種をターゲットに研究を重ね、ついには4種の遺伝子型のラベンダーを大規模栽培用に育てあげました。この4種の遺伝子型をもつそれぞれのラベンダーは、交雑されて”comunelles”という名称が付されています。気候の変動にも強く、生化学的にも安定したラベンダー精油が採れると言われておりますので、現在の栽培種は、その系統から派生したものが多いと思われます。その後、種々のクローン種が生み出され、それらが市場を賑わしていますので、皆さんが信じて疑わない真正ラベンダー精油も、よく調べてみるとクローン種のラベンダーから抽出された精油だったということも多いかと思います。


最近、新しいラベンダー精油の分析実験が行われ、米国農務省なども絡んだ研究でしたが、真正ラベンダーのドライフラワーだと信じて専門業者から購入し、精油を抽出して分析したものが、どうやら成分からしても、まったく別種のラベンダーであったようで、その論文をめぐって、一部のアロマ界ですが、騒然としています。専門家たちが見ても、区別がむずかしい場合があるようです。


ラベンダー精油は、アロマセラピーでも一番人気の種類とあって、真正ラベンダーの蒸留に長時間をかけるこだわりの業者は非常に限られると言われています。一般的な蒸留時間は、アロマ界では15分と言われています。このような短時間でも、真正ラベンダーの成分の大部分が抽出されてしまうのだそうです。一番問題なのは、蒸留中に生まれる酢酸リナリルが十分に生成されないため、出来上がった製品に、合成の「酢酸リナリル」が必ずと言ってよいほど添加されます。でないと、ISOの基準で、真正ラベンダーの成分範囲に入らないためです。私たちは、こういうラベンダー精油を100%天然のオーガニック製品として信じるように教育されてしまっているのです。合成の酢酸リナリルには、どうしても避けることができないジヒドロリナロールという副次的な天然精油には決して混入することがない成分が付随していますので、それを調べれば合成香料入りか否かは、GC/MSで検査が可能だと言われています。


裏の裏までご自身でリサーチしないと、正しい精油を入手することは難しいかと。欧州屈指の精油分析者であるクライブ・ベンドン氏が言うには、本物の真正ラベンダーであれば、成分を分析するとある程度産地がわかるとのこと。カンファー量が多いと、鎮静効果どころか、逆の生理作用を発現することもありますので、真正ラベンダー=鎮静作用とはいかないのです。精油の作用を一般化して、A精油には、これこれの薬理作用、B精油は、これこれの症状に効く、などとは言えないということです。世界のアロマ教育が誤りであるのは、産地ごと、季節ごと、採取時間ごと、抽出条件ごとに成分の異なる精油の作用を、すべて一般化して、利点ばかりにスポットライトを当てているということになりそうです。


欧州屈指の精油分析者の一人にアーサー・フィリップスという化学者がいます。彼の口癖は、「植物の栽培/蒸留を一貫して行っている企業から精油を仕入れる場合、一人でも仲介者が介在すると、もう元の精油ではなくなる。」名言だと思います。実際に、フランスでラベンダーを栽培/蒸留しているアンリー・ポーション氏は、自身が生産する5倍量が自分の農場産だとして、フランスから海外に輸出されていると公に嘆いています。


さあ、世の精油辞典をご覧になって下さい。書かれている適応症、あなたは本当に信じることができますか。

2014年10月15日 (水)

ルネ=モーリス・ガットフォセ情報の誤り

メディカルアロマセラピーがフランスで確立したと信じている人々は、そのきっかけがガットフォセの大やけど事件であるという逸話を信じて疑わないかも知れません‥。彼が「Aromathérapie」と題した書籍を出版したのは1937年のことです。彼が化学者であった父の実験室でやけどを負ったのは、息子のHenri-Marcelが誕生したその日、1910725日のことでした(ガットフォセのお孫さんに直接お会いしている高山林太郎氏からは、この年号は1915年の誤りだとのご連絡をいただきました。私の記事はガットフォセの親族も参加なさったガットフォセの記録映画のテープ起こしからのデータで、そこに明記されている事故の年月日です)。

かなり重症で、ガス壊疽になったとも伝えられています。通常の逸話では、実験室にあったラベンダー精油を塗布して、みるみる間に火傷が治癒に向かったとされています。彼は、実は結構長期にわたり、病院に入院し、治療を受けていたとのこと。おそらく、退院後にプロバンス地方の農民たちがラベンダーのエッセンスを種々のトラブルに利用していたことを思い出し、実験室にあったラベンダー精油を火傷の傷に試し、大変効果的だったために、ラベンダー精油の抗菌作用や創傷の治癒効果に着目していったと記録されています。

 

以下は親族が所有していたその病院と病室の写真です。

Hospital Room

まだ、その頃は抗生物質などもありませんでした。記録では壊死した皮膚組織をピルビン酸で治療したことが記されています。いま一つ、傷のあがりが完璧でなく、思いたったガットフォセは、ラベンダーの精油、それも、おそらくテルペンレスラベンダーであったと言われていますが、それを試してみたところ、創傷がきれいに治ったとのこと。その後の著書でさかんにテルペンレス精油の効果を強調していることから、実際の経験に基づく彼の理論であるだろうと考えられています。

 

その後、1920年頃までは、ラベンダー以外の芳香植物を求めて、東欧のバラ農園、アルゼンチン、日本、中国、インド、マダガスカルなど様々な地域の芳香植物のリサーチに力を注ぎ、ビジネス展開にも熱心に取り組みました。同時に、多くの執筆活動もし、その書籍が外国語にも翻訳されるようになりました。研究結果を携えて、薬剤部門、香水部門、動物部門からなるアロマビジネス分野も立ち上げ、大変成功をおさめました。彼が興味を持っていたのは、精油や香料ばかりでなく、建築学、絵画、小説など、それはそれは多才な人物でした。

Leonardo_da_vinci

彼は、1928年頃から著書の中でAromathérapieという造語をよく使っておりましたが、それをタイトルとした本が1937年に出版され、さらに3年後の1940年には、Aromathérapie第2段が執筆されています。

Aromatherapie2

しかし、その書籍が世に出版されることはありませんでした。その書籍中には、彼が仲間と行った臨床実験、息子たちが行った医学的な研究などなど、大変興味深い内容が書かれているとのこと。彼は、テレビやハイウェイ、現代で言う研究発表に用いるパワーポイントに類するような技術の開発にも大変興味を示し、さかんにリサーチもしていたようです。

 

私は、ガットフォセは、究極の香水づくりに没頭した「にほいフェチ」だと勘違いしておりました。多才多芸な人物であったことを知り、大変興味をそそられます。Aromathérapie第二弾、これこそ出版されるべきアロマ関連書籍ではなかったかと大変悔やまれます。

 

1901年には、英国ですでに精油を自身の病院で治療に使っていた医師らがいます。イタリアでも、GattiCajolaPaolo Rovestiという医師らが精油の抗菌力の研究をしておりますので、決してフランスでメディカルアロマセラピーが生まれ、そこで確立したとは言えません。かの有名な「L'aromathérapie exactement;和訳:アロマテラピー大全」を著した2名の著者らは、すでにフランスにおける活躍の場を失っており、その場をフランス外に求めて暗躍しているのではないかと言われています。精油の飲用などに関する科学的根拠を追求され、ひたすら逃げ回ることしかできない彼等を大歓迎するアロマセラピストであふれる日本は、彼等にとっては天国なのでしょう。

 

この書籍の復刻活動をなさっている高山林太郎氏から時折お電話をいただきますが、私は復刻断固反対の意思表示をさせていただいています。その理由は、市販の精油の大部分に偽和があるとされている昨今、学術的根拠が示されていない精油の使い方や、安全性データがない精油を用いたメディカルアロマと称するレシピだけが一人歩きをしたら、どれほど危険なことでしょうか。アロマ関連書籍が書店の棚を賑わしています。それらに書かれている情報は本当に正しいものでしょうか。

アロマの歴史に誤りが‥!?

アロマセラピーでは、フランキンセンスやミルラなどの樹脂から抽出した精油が繁用されています。この2つの樹脂は、聖書にも登場するほど有名なものですが、イエス・キリストの誕生にまつわる東方三賢人の贈り物の中に、この素材が含まれていたらしいことは、キリスト教の書物に書かれています。この時、2種類の樹脂に加えて、Duhub (ダハブ)という素材が贈られているのですが、 この用語はモロッコなどでは現在も「Gold」の意味を表しますが、古代ヘブライ語では、「樹脂の1種」を意味するという意見もあり、今となっては確認することができませんが、東方の三賢人の贈り物は、「3種の樹脂」と捉えた方が何となくすっきりするようにも思えます。可能性としては、ベンゾインなどが妥当なところでしょうか。

 

もう1つ、キリストにまつわる香油のお話です。キリストが折りにつけ愛用していたとされるナルドの香油が、世に言われているスパイクナードの香油でなかったとしたら、大きなアロマのある教育団体は、名称を変更しなくてはならなくなるかも知れませんね。古代ローマでは、何とラベンダーという植物はNardusの呼称で、人々からは「ナルド」と呼ばれ、この香油は勿論のこと、薬用のハーブとしても利用されていました。聖マルコもそのことに触れているとか。この頃に栽培されていたラベンダーの種は、今で言うスパイクラベンダーであったことが様々な歴史書に書かれています。ナルドの香油が「スパイクラベンダーの香油」であった可能性は非常に濃厚です。このあたりの詳細は、ハーブを勉強する時のバイブル的テキストの著者であるMrs.Grieveが著書の中で述べています。

 

アロマセラピーを習う時に修得するアロマの歴史情報には、裏の裏がありそうですね。かの有名なローズの精油を初めて蒸留した人物とされるアビケンナ(イブン・シーナー)などにまつわるお話も真っ赤なウソのようです。バラの蒸留水ハーブウォータは、アビケンナの時代をさかのぼること200年前、すでにアラブ人たちはハーブウォータの生産技術を持っていたのでした。アビケンナは、その蒸留法を科学的に記録したということに過ぎなかったようです。この情報は、私の恩師Martin Wattが、近年アビケンナの研究者であり、記念碑を建立したアーティストから直接得た情報です。アロマの教科書に書かれていても、様々な情報については、しっかりとご自身でも調べていかないと、とんでもない誤った情報をそのまま次の世代に伝えてしまうことになりかねません。

2014年10月14日 (火)

なぜ猫に精油が危険なのでしょうか。

前の記事でお知らせしたe-Bookが公表されると、米国のブログの読者から質問のほか、米国にはネコの治療に精油を利用している著名な獣医師がいるので、その獣医師と話し合いをするように、などの書き込みがなされました。私は、その獣医師とは考え方が異なるので、同じ土俵に乗る気持ちがないことをお伝えすると大変辛辣な批判もなされ、その獣医師の根強いファンがいることを思い知らされました。


私は、なぜネコでそれほどアロマが危険なのか、いかなる理由があってもアロマはネコにとってはリスクが高過ぎるかということを、可能な限りわかり易く説明を加えました。


肝臓の2段階目の代謝酵素で、UGT1A6というのは、人をはじめ、すべての動物でも肝臓のこの段階の代謝/解毒の1/3を担う大変重要な酵素です。今までは、イエネコと一部の野生ネコなどで、その遺伝子が偽遺伝子で、正常な働きをしないのだと言われてきました。ここほんの一、二年のこと、人の薬理学者の研究で、たまたま種々の動物たちの血液検体が入手できたのでしょう、この非常に大切な酵素をつくる遺伝子の解析が行われました。mRNAのタンパク質をつくるコドンという単位の分析が詳細になされたのです。いままで漠然と不完全な酵素とだけしかわからなかった部分が、遺伝子のどの部分に変異があって、この酵素が働かないのかが解明されたのです。それも、イエネコのみでなく、調べた野生のネコ類で、遺伝子に異常があることが判明しました。これは、真の肉食動物とされるネコ類が、どれほど昔から植物に接する機会がなく、植物の成分を代謝する機会も、必要もなかったことを如実に物語っています。大型でも小型でも、ネコたちは、遺伝子的なハンディキャップを背負っていると言えるでしょう。


更にイエネコに関しましては、肝臓第一段階目の代謝酵素のCYP2Cや、薬剤などの代謝に極めて重要とされるCYP3Aの活性も非常に弱く、様々な毒物/薬物の代謝力は、他の動物種の1/6 1/10しかないとの報告もなされているのです。ネコの飼い主さんたちは、それでもネコに精油を使ってみたいでしょうか。精油を治療に用いている獣医師たちは、きっと、上述のようなネコの代謝酵素や遺伝子の情報をお持ちではないでしょう。治療に成功したネコは、単にラッキーだったとしか言えないのではないでしょうか。もう一度、同じ治療をしたとしたら、何が起るかを予想できる人は皆無です。また、雌ネコは雄ネコより、リスクが高いということも判明しています。ネコばかりではなく、子イヌも、肝臓酵素UGT1A6を持っていませんので、子イヌには、ネコと同様に精油は使うべきではないと思っています。人の新生児も、UGT1A1を持っていませんので、自分の胆汁を代謝できずに新生児黄疸が起ることはあまりにも有名です。それでも、ベビーアロマも産院での出産時の精油の利用なども大ブームです。精油の偽和の観点から言いましても、新生児や周産期や授乳時に精油を利用するのは、決して賢明ではないと考えています。


新生児や幼児に対する精油利用の危険性は、是非Maria Lis-Balchin著「アロマセラピーサイエンス」をご参照下さい。

2014年10月13日 (月)

猫から飼い主への手紙

猫を飼っておられる方々に、是非ともお読みいただきたいTorajaの手紙です。20074月に初版が発行されましたが、諸般の事情で再出版がかなわず、電子書籍で対応して参りましたが、それも絶版となり、中古の書籍が3万円越えの価格で販売されることなどがあり、大変憂慮しておりました。

2014624日、多くの読者をもつ米国の同志が私どものe-Bookをブログで公開してくださり、どなたでもお読みいただける体制が整いました。お一人でも多くの猫の飼い主さんに、ペットの飼い主さんに、そして、


精油を使って猫を治療しておられる獣医師の皆さんに、また、世界のアロマ関係者すべての方々に、読んでいただきたいと心から願っております。


書籍の画像にアクセスしてしばらくお待ちいただくと、次のページへ移る矢印が現れますので、順に全ページをお読みいただけます。PDFファイルとしてダウンロードいただくには、5ドルの寄付が必要です。

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