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2014年10月19日 (日)

精油の鎮静作用

学術的に精油の鎮静作用がなぜ得られるかという情報は、種々の報告がなされていますが、研究に使用した精油の質を評価できない論文も数多く、科学的な証拠(エビデンス)が根底から崩れることが多々あるかと思います。ここでは、一般的な真正ラベンダー精油のリナロールなどが、血中に吸収された場合にみられる最も可能性が高い理論をご紹介したいと思います。

 

アロマセラピストの殆どが、精油がなぜ効くのか、という情報をお持ちではありません。ひたすら、xxの精油がxxに効くという情報をたたき込まれているように感じます。「血液脳関門」という用語する初耳の方が多く、アロマ教育の根本が抜け落ちていることに、怒りさえ覚えます。

 

鎮静作用というのは、副交感神経が優位になり、中枢神経が抑制されることを意味しますので、人での心理的なプラセボ効果を除外しますが、生理学的には精油成分が強固な「血液脳関門」を突破して、中枢神経領域に入り込まなくてはなりません。大脳は、私達の生命を司る中枢ですから、生体外異物のXenobioticsが簡単に侵入されると影響があまりに大きいですので、極力、いろいろな化学物質が脳内に入らないように守っている砦のような機構です。脳炎になると、薬を目的地まで届けるのに、大変な苦労を伴います。

 

人の場合、アロマに興味があると、アロマショップなどで事前の情報が入りますので、「ラベンダー精油は不眠症に大変効果的」と言われて精油を購入すると、それらしき香りのする香料であっても、暗示効果でグーグーと寝てしまう方がいます。しかし、動物では、事前に暗示を与えることができませんので、これにはしっかりとした科学的な理由なければ寝てくれません。

 

血液脳関門のお話に戻ります。その強固な関門を、精油成分の中には、いとも簡単に突破するℓ-リナロールのような物質があります。皆さんは、血圧を下げる作用があると言って、GABA(キャバ)が含まれる健康食品なるものを試された方もおられるでしょう。このGABAはγアミノ酪酸(ガンマアミノ酪酸)という物質で、生体内で産生される生理活性物質の1つです。それも、神経の興奮を収めるための抑制性神経伝達物質です。GABA受容体には何種類かあるのですが、この受容体にGABAがはまると、イオンチャンネルが開通し、塩素のマイナスイオンが、中枢に流れ込み電気的に興奮している神経を抑制するシステムになっています。当然、GABA受容体が活性化するということなのですが、その前に、活性化されるのに十分な理由があり、そこで体内の酵素が関係してきます。Rリナロール(アロマ界では、ℓ-リナロールと呼ばれる光学的に左旋性のリナロールです)が、キャバトランスアミナーゼというGABAの分解酵素を阻害するために、処理されないGABAが脳内で増えるために、次々に専用の受容体に結合し、中枢に塩素のマイナスイオンが大量に流れ込むという現象が起ります。これが鎮静作用のメカニズムとされています。

 

GABA受容体には、側面にベンゾジアゼピンという薬剤がはまる部位を持つものがあります。この薬剤は、トランキライザーとして、睡眠導入剤として、様々な種類がありますが、何らかの理由により、病院でこの薬剤を処方されている方がたまたまℓ-リナロールを多く含む真正ラベンダーなどの精油に曝露されると、安定剤なのに、睡眠薬を飲まされたように起きていられない現象がみられ、あるいは睡眠薬と同時に真正ラベンダー精油を利用すると、睡眠時間が延長し、翌朝仕事に遅刻してしまうというような事態になりかねません。この受容体にGABAとベンゾジアゼンピンが同時に結合すると、通常より大変太いイオンチャンネルが開くことが原因です。

 

この他に、睡眠薬が効き過ぎてしまう理由には、やはり代謝酵素に影響する精油の作用がありますので、このメカニズムを理解するには、しっかりと肝臓の機能を勉強しなければなりません。睡眠薬がちょうど良い時間に血中濃度が下がるように処方されているのに、精油を使っていると、代謝酵素が働かずに、いつまでも睡眠薬の成分が体内から排泄されない事象が起ります。全世界のアロマ教育で、一番すっぽ抜けてしまっている情報ではないかと思っています。

 

余談ですが、GABAを含む健康食品がありますが、口からGABAを摂取しても、外からもってきたGABAは、血液脳関門を突破することができませんから、脳内のGABAは食事で増えるということはありません。犬も猫もサプリメントが大流行りですが、特に動物のサプリは注意が必要です。私達は、獣医学的な理由がない限り、正しいごはんを与えていれば、乳酸菌製剤以外のサプリは不要ではないかと考えています。

 

精油は利点ばかりが強調されますが、医療関係者の皆様、どうぞ精油の薬剤との相互作用を軽視なさらないで下さい。ハーブや漢方薬以上に高度に濃縮された有機化合物です。精油はXenobioticsであるということを認識していただきたいと思います。

 

私どもでは、産婦人科でアロマセラピーの施術を行っている病院にも情報をご提供し、妊産婦さんや新生児への精油のリスクをご説明させていただいております。

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