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2014年10月15日 (水)

ルネ=モーリス・ガットフォセ情報の誤り

メディカルアロマセラピーがフランスで確立したと信じている人々は、そのきっかけがガットフォセの大やけど事件であるという逸話を信じて疑わないかも知れません‥。彼が「Aromathérapie」と題した書籍を出版したのは1937年のことです。彼が化学者であった父の実験室でやけどを負ったのは、息子のHenri-Marcelが誕生したその日、1910725日のことでした(ガットフォセのお孫さんに直接お会いしている高山林太郎氏からは、この年号は1915年の誤りだとのご連絡をいただきました。私の記事はガットフォセの親族も参加なさったガットフォセの記録映画のテープ起こしからのデータで、そこに明記されている事故の年月日です)。

かなり重症で、ガス壊疽になったとも伝えられています。通常の逸話では、実験室にあったラベンダー精油を塗布して、みるみる間に火傷が治癒に向かったとされています。彼は、実は結構長期にわたり、病院に入院し、治療を受けていたとのこと。おそらく、退院後にプロバンス地方の農民たちがラベンダーのエッセンスを種々のトラブルに利用していたことを思い出し、実験室にあったラベンダー精油を火傷の傷に試し、大変効果的だったために、ラベンダー精油の抗菌作用や創傷の治癒効果に着目していったと記録されています。

 

以下は親族が所有していたその病院と病室の写真です。

Hospital Room

まだ、その頃は抗生物質などもありませんでした。記録では壊死した皮膚組織をピルビン酸で治療したことが記されています。いま一つ、傷のあがりが完璧でなく、思いたったガットフォセは、ラベンダーの精油、それも、おそらくテルペンレスラベンダーであったと言われていますが、それを試してみたところ、創傷がきれいに治ったとのこと。その後の著書でさかんにテルペンレス精油の効果を強調していることから、実際の経験に基づく彼の理論であるだろうと考えられています。

 

その後、1920年頃までは、ラベンダー以外の芳香植物を求めて、東欧のバラ農園、アルゼンチン、日本、中国、インド、マダガスカルなど様々な地域の芳香植物のリサーチに力を注ぎ、ビジネス展開にも熱心に取り組みました。同時に、多くの執筆活動もし、その書籍が外国語にも翻訳されるようになりました。研究結果を携えて、薬剤部門、香水部門、動物部門からなるアロマビジネス分野も立ち上げ、大変成功をおさめました。彼が興味を持っていたのは、精油や香料ばかりでなく、建築学、絵画、小説など、それはそれは多才な人物でした。

Leonardo_da_vinci

彼は、1928年頃から著書の中でAromathérapieという造語をよく使っておりましたが、それをタイトルとした本が1937年に出版され、さらに3年後の1940年には、Aromathérapie第2段が執筆されています。

Aromatherapie2

しかし、その書籍が世に出版されることはありませんでした。その書籍中には、彼が仲間と行った臨床実験、息子たちが行った医学的な研究などなど、大変興味深い内容が書かれているとのこと。彼は、テレビやハイウェイ、現代で言う研究発表に用いるパワーポイントに類するような技術の開発にも大変興味を示し、さかんにリサーチもしていたようです。

 

私は、ガットフォセは、究極の香水づくりに没頭した「にほいフェチ」だと勘違いしておりました。多才多芸な人物であったことを知り、大変興味をそそられます。Aromathérapie第二弾、これこそ出版されるべきアロマ関連書籍ではなかったかと大変悔やまれます。

 

1901年には、英国ですでに精油を自身の病院で治療に使っていた医師らがいます。イタリアでも、GattiCajolaPaolo Rovestiという医師らが精油の抗菌力の研究をしておりますので、決してフランスでメディカルアロマセラピーが生まれ、そこで確立したとは言えません。かの有名な「L'aromathérapie exactement;和訳:アロマテラピー大全」を著した2名の著者らは、すでにフランスにおける活躍の場を失っており、その場をフランス外に求めて暗躍しているのではないかと言われています。精油の飲用などに関する科学的根拠を追求され、ひたすら逃げ回ることしかできない彼等を大歓迎するアロマセラピストであふれる日本は、彼等にとっては天国なのでしょう。

 

この書籍の復刻活動をなさっている高山林太郎氏から時折お電話をいただきますが、私は復刻断固反対の意思表示をさせていただいています。その理由は、市販の精油の大部分に偽和があるとされている昨今、学術的根拠が示されていない精油の使い方や、安全性データがない精油を用いたメディカルアロマと称するレシピだけが一人歩きをしたら、どれほど危険なことでしょうか。アロマ関連書籍が書店の棚を賑わしています。それらに書かれている情報は本当に正しいものでしょうか。

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