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2015年3月

2015年3月15日 (日)

薬草療法で気をつけなければいけないこと

人も動物も、薬草療法の専門書籍が世界でも数多く出版されています。日本語に訳されたものも多くありますが、その大部分はアロマ関連書籍と同様、利点ばかりが強調されており、読む側は大きなリスクを負わされると考えています。それは、翻訳本を書籍を出版する側も含めまして、薬物の代謝の情報をお持ちでない方々が関わっておられるからではないかとも考えられます。

 

医療におけるCureCareをテーマにする「医療人類学」からの視点からみても、病気治療の行為は、根本から見直されるべき時代に入っていると言えるでしょう。どれほど西洋医学が進展しても、世界各国の独自の文化的背景に培われてきた補完代替医療が捨て去られることはないでしょう。たとえ、エビデンス(科学的証拠)に欠ける部分があっても、無視できない部分があるはずです。現代医療が、病人をみずして病気をみるのが主流になっているためです。

 

文化の違いからくる「文化的アイデンティティ」は、民族集団間の現行の紛争をみても理解できるように、イデオロギーをも凌駕し、人類全体に問題を提起しています。

 

西欧医学を志す医療家が、すべての補完代替医療を眉唾ものと言うことも正しくありません。また、限局した補完代替医療をもって、すべての健康問題を解決しようという理論も正しくないと思います。

 

アロマのことに関して言えば、薬草療法の情報がそっくりコピペされて、その利点だけの情報が飛び交い、巨大ビジネス化されている昨今、アロマを学術的に捉えようと研究している方々が、そういう巨大ビジネス集団に講師として招かれ、背景を知らずにご自身の研究を発表したとしましょう。どのような影響が考えられるでしょうか。

 

アロマの巨大ビジネス組織にとっては、自分たちの組織の大きな権威付けになるでしょう。そういう組織の講師料は巨額(ほんの短時間で 10万越え!)なことが多いですので、講師にとっては何ともありがたいお話になります。研究発表の場が与えられて、なお、お小遣い稼ぎになるでしょうから。受講生は圧倒的に若い女性が大多数を占めます。とてつもなく、やりがいのある仕事に思えるでしょう。自分が利用されていようとは、いささかも疑いません。

 

ご自身が研究に利用している精油などの品質は、厳密には保証されていないことがほとんどではないでしょうか。また、 in vitro(試験管内の実験)結果で、これこれの効果が得られているので、そのまま in vivo(生体を用いた場合の反応)で同様の効果が期待できると予測したとしましょう。どんなリスクがあるでしょうか。

 

アロマの研究をなさっておられる方々が、新しい研究発表がなされると、すぐさま、その論文を翻訳なさって発表される方がおられます。 STAP細胞事件を思い出していただければ、理解できるはず。研究者たちは論文発表に凌ぎを削ります。出たばかりの論文を鵜呑みにするのは、それ自体にリスクを伴うことが多々あります。その発表のされ方にも、種々の方法があり、査読(審査)システムがある専門雑誌であれば、学術的ということでもありません。いいかげんな査読者が数多く存在するからです。お金をつめば、すぐに出版してくれる学術雑誌も無数に存在します。国際的に発表されたというニュースに飛びついてはならない理由の1つです。

 

さて、薬草療法にお話を戻します。過日、オーストラリアのある獣医さんが私共の日本アニマルアロマセラピー協会の通信講座を受講して下さいましたが、彼女が獣医学的な薬草療法[Veterinary Herbal Medicine]の書籍の監訳者のお一人でした。薬草療法と芳香療法(アロマセラピー)の根本について、激論を戦わせましたが、最終的にはやっと同じページにたどり着けたとのコメントをいただけました。

 

薬草療法には私も大変興味がありますので、さっそく彼女の著書をアマゾンで購入しました。手元に届くまで、大変時間がかかりまして、先週やっと入手できました。700ページ越えの書籍ですが、通常の薬草療法などの本と異なり、ハーブ療法の根拠に関して批判的な意見のある獣医師の記事にも1章を割いて掲載しているほか、興味深いのは24ページもわたって、ハーブと現代の医薬品との相互作用に関する情報が参考文献を明示して記載されていることです。動物のハーブ情報ではありますが、このような書籍こそ翻訳本が出るべきだと思います。まだ、全部を読んでおりませんので、詳細なコメントをするわけにはいきませんが、異例の動物ハーブ療法の書籍ですので、そんな本があることをお伝えしたいと思い、ブログで取り上げさせていただきました。2007年出版の書籍ですので、すでに古くなっている情報もたくさんあるかと思います。情報がどんどん古くなってしまうのが学術書の難点ではありますが、他のハーブ療法の書籍では得難い情報が満載です。動物のメディカルハーブを勉強なさっておられる方々にとっては、一度は目を通しておくべき書籍ではないかと思われます。

2015年3月 1日 (日)

ボトル記載の植物の学名を信じますか?

ボトル入りの精油を購入する際には、精油を採取した植物の学名が付されていないものは信頼性に乏しいと習いませんでしたか?


精油の偽和が叫ばれる昨今、学名のほか、亜種名あるいはケモタイプなどが書かれていると、より信頼性が高まると勘違いしている方も多いかと。

ボトルに書かれている学名通りの植物から採取された精油である確率は、限りなく一桁の%に近いと思った方が正しいようですよ。

例えばフランキンセンス精油を例にとりますと、主要産地に生育しているボスウェリア属の種で精油の素材になるものは、20種以上もあるそうです。一つの木から少量しか採れない樹脂ですので、少しずつ採取した樹脂が市場に集められます。地域によって、主要な種が分布しているようですので、大まかな分類は可能かもしれませんが、植物学者が同行して、これはBoswellia carterii、これは B.frereanaというように同定しなければ、とても種を分けることは困難だとされています。種々の樹脂が混ぜられて市場に運ばれますので、その中から、B.carteriiだけを分類して蒸留するなど、とてもできるはずがありません。ちなみに、近年は、B.sacraとB.carteriiは同義語(同種)であるとされています。

そんな訳で、ボトルにBoswellia carteriiと記載されていても、当該種の植物から抽出された精油であるにちがいない、とは思わないことが肝要です。これは、フランキンセンス精油に限りません。ラベンダー精油でも交雑していることがありますし、真正ラベンダーの種を購入して育てたはずなのに、ということも多々起こり得ます。種を扱う業者さんが間違えてしまうこともあったりします。ジャーマンカモミールの栽培者が、収量を上げるためにモロッコカモミールをかけ合わせて、香料業界からそっぽをむかれ、やむなくアロマセラピー業界にターゲットを絞り込んで盛んに販売網を広げている例もあります。米国精油分析の第一人者であるDr.Pappasは、市販フランキンセンス精油の80%に合成のαピネンが添加されているとも公言なさっています。

アロマセラピー業界は、精油の利用者が自己責任で使うのが建前ですし、消費者が成分を分析することなど、皆無に近いですので、売る側にとってはこんなにおいしい商売はないのです。私のアロマの恩師 Martin Wattは、占星術の専門家ワンダ・セラーさんと一緒に、フランキンセンスの産地を旅して、「Frankincense and Myrrh」という興味深い本を書いています。

Tea Tree精油も同じことが言えます。ヨーロッパ薬局方では、Melaleuca属(M.alternifolia, M.linariifolia, M.dissitifloraなど)の葉や先端分の枝を水蒸気蒸留して得られる精油と規定しており、M.arternifoliaのみの植物から採取した精油ではありませんね。 ボトルに記載されている植物の学名は信頼性に欠けることがおわかりいただけたでしょうか。

一般の消費者は、一体、何を信じればいいのでしょう。精油を入手する際の大変大きな問題です。

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