ペット

2014年11月16日 (日)

ハイドロゾルであれば猫に安全でしょうか?

ハイドロゾルは、かつてその殆んどが廃液として蒸留装置から廃棄されていました。しかし近年、化粧品の原料をはじめ、様々な分野でハイドロゾルが注目を集め、需要が高まる中、高額で取引されるようになり、そのため、小規模農家などでは、無菌的な操作をせずに不衛生な状態で採取されたハイドロゾルに、防腐剤(ソルビン酸カリウム、パラベン、フェノール、エトキシエタノールなど)を添加して市場に出荷するといった行為が日常的に行われるようになってきています(アーサー・フィリップス氏私信)。ハイドロゾルから、クリプトスポリジウムなどの原虫が検出されたという報告も増えています。これは、酪農農家が近くに存在することを意味します。著名な講師によるハイドロゾル講習会では飲用が推奨されているようですが、自身の飲用は勿論のこと、動物に飲ませることは勧められない大きな理由の1つでもあります。精油と同じように、xxのハイドロゾルがxxのような症状に効くとばかりに、高額なセミナーなども欧米のセラピストにより開催されているようです。

 

また、販売されているハイドロゾルのいくつかは本当のハイドロゾルではなく、界面活性剤やアルコールを使って蒸留水に精油や合成香料を乳化させて溶かしたものもがあります。これらはもちろん論外ですが、このような製品を代謝機構にハンディカップを背負う動物に使用するとリスクを伴うでしょう。ハイドロゾルであれば、猫やフェレットに安全ということは決して言えません。

 

ハイドロゾルのpH値:

ハイドロゾルには、多くは酸性の固有のpH値範囲があるという記述の書籍があります。ハイドロゾルのバイブル的書籍です。著者は世界各国でセミナーをして、症状別に特定のハイドロゾルの飲用もすすめているようですね。最近、ハイドロゾルのpH値は一定ではないということが明確になってきました。ハイドロゾルも、植物が育つ環境によってその成分構成は一定ではなく、酸性を示すとは限らないのです。植物が栽培される土壌のpH値に大きく左右され、蒸留条件によって天然のラベンダーハイドロゾルでもアルカリ性を示す製品もあります。しかし、本に記載がある固有のpH値にあわせるために、ハイドロゾルの業者は、クエン酸などでpH調整をするのが当然の処理のようになってしまっているのが現行のハイドロゾルビジネスです。このpH調整剤や防腐剤は、食品添加物に一般に使用されており、強い毒性はありませんが、しかし、ハイドロゾルは、それ自体も十分な成分分析されているものが少なく、安全性は確立されておりません。使用には注意が必要であることは間違いありません。『The Lavender Cat』というサイトでは、米国National Animal Poison Control CenterSafdar Khan獣医師が、ネコでのハイドロゾル使用に安全性はまったく保証されたものではないと述べてられています。私ども日本アニマルアロマセラピー協会では、大学との共同研究で犬猫にハイドロゾルを利用した臨床実験を行っておりますが、必ず成分を分析し、その成分と共に、分析に用いた条件を明示しております。アロマの研究発表では、「こういう成分のこういう製品を用いたら、こういう結果がでました」としか発表できないことを知る研究者はほんの一握りの方々です。殆どが、どこ産のxx社のxx精油を使用して実験をしたら、こういう結果が得られました。従って、xx精油にはこのような作用があると結論づけられると結んでいることが殆どです。

 

精油が、蒸留のロットごとに、様々な条件で成分が変動することを認識せず、1精油の作用を一般化してしまうことが大きな誤りであることに、研究者たちは気づいておりません。

ですから、痴呆症の予防にxxの精油が効く、インフルエンザの予防にxxの精油をつけたマスクをすると良いなどと、利点ばかりをクローズアップして、隠された有害作用を無視して公に発言をなさる医療関係者には、レッドカードを提示したい気持ちです。これらの公表記事に利用されている精油には、高濃度の1,8-シネオール(ユーカリプトール:共にアロマ界の俗名)が含まれており、この精油成分には細胞傷害性があることが判明しているものです。医療用クリームに添加すると、皮膚での薬効成分の浸透性を高めるために繁用されるようになっています。ミクロの傷がついて、浸透性が高まるのではありませんか?痴呆症の予防に終日香りを嗅いでいるお年寄りが、喉がヒリヒリすると当該ブレンドを処方されたあるアロマセラピストのブログで述べています。終日、お部屋で飼い主が終日ディフューズをしていたら、飼い猫が肝障害になったと、当協会へもお問い合わせがございました。この1.8-シネオールは、肝臓第I相のCYP3A4という酵素で解毒/代謝することが判明しています。お年寄りたちは、お医者さんで様々なお薬を処方されていることも多いかと思います。お薬が効き過ぎたり、逆にまったく効かなくなったり、相互作用には大変恐ろしい現象があるのです。そのことに目をつぶって、アロマの効果/効能だけを強調することは、アロマ関係者による犯罪ではありませんか?

 

近年の研究で、ハイドロゾルによっては、微量ながらフェノール類(例、タイムやクローブのハイドロゾル)やケトン類(例、スペアミントやユーカリ・ラディアタのハイドロゾル)、更にケトンの一種であるカンファー(例、ローズマリー/ベルベノンタイプのハイドロゾル)が多く含まれることもわかってきています。今後の分析でも、新たに動物にとって有害な成分が検出される可能性もありますので、留意しながら使用すべきであると思っています。健常なネコであっても、良質のハイドロゾルでも、使用は必要最小限に止めた方が安全だと思っています。めずらしい種類のハイドロゾルなどの使用は避けるべきでしょう。安心して臨床に利用するには、成分分析は欠かせない条件の1つです。

 

2014年11月11日 (火)

人の補完代替医療のお話ですが‥

日本発の情報です。医学系でない大学生1096名に補完代替医療(CAM)に関するアンケート調査が行われました。そのうち、CAMという用語があることを知っていた学生は11%。最も多く知られていたのはアートセラピー(芸術を介した心理療法に類するもの)、次に温泉療法、3番目にアロマセラピーが挙げられました。CAMのことを知る学生たちの数は多くありませんが、様々な療法にそれぞれの学生が独自に優先順位をつけて、複数の方法を試したいと考えていることもわかりました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25332299

 

CAMの正しい知識がないにもかかわらず、学生たちは自己判断でサプリメントなどを服用していることもわかりました。学生たちのこのような行動が健康に有害な作用をもたらす可能性も指摘され、医療関係者は、患者と密にコミニュケーションをとることで、補完代替医療のリスクを認識しなければならないと結語しています。

 

人の若者の世界における日本の現状ですが、ペットでもサプリメントが大流行りで、多くの飼い主さんがご利用なさっておられることと思います。

 

サプリメントは、創薬のように製薬会社が時間と多額の費用をかけて研究開発する必要がないものが殆どです。審査も緩く、自己責任での利用になりますから、アロマセラピーの精油と同様に大変おいしいビジネスなのです。1つ当たると濡れ手に泡のビジネスができます。スーパーなどのサプリメントの棚をみて下さい。コマーシャルをみて、自由に選んで購入することができます。ビタミン剤なども、必要な成分の用量は、1つの錠剤にしてみると、目に見えない量ですね。他の成分として、増量剤、結合剤、崩壊剤、着色料、香料のほか、犬猫で副反応を誘発する可能性のあるゼラチンが利用されている場合もあります。

 

特に猫にハーブ素材を与えていらっしゃる方はおられませんか?猫は根本的に植物の成分の代謝が不得意です。もし、フェノール誘導体を含むハーブであったりしたら、命にかかわる事象が起っても不思議ではありません。私たちが、ハーブ入りのキャットフードを決しておすすめしない理由の1つでもあります。

 

高齢犬にグルコサミンのサプリを与えていませんか?グルコサミンは、関節で利用するには、アセチルグルコサミンにならないと利用することができません。市販のサプリは、殆どが塩酸グルコサミンか、硫酸グルコサミンですね。犬は、肝臓で様々な物質をアセチル化する能力がありません。何が起るでしょうか?

 

人でも個人差があるように、動物にも個体差があります。それ以上に、動物では、代謝に関して動物の種差があることを忘れてはなりません。人間の健康食=犬の健康食/猫の健康食 とはなり得ない理由がそこにあります。

 

医師や獣医師は、患者/患畜(飼い主)の禀告を聞く時に、何らかのCAMを行っていないか、問わなければならない時代であることが浮き彫りになりました。


ペットに
CAMを考慮する前に、4Dミートを含まない、よけいなハーブを含まない、安全なペットフードの情報を得られて下さい。

2014年10月25日 (土)

抗生剤と精油/耐性菌の問題

夏期下痢症を起こしたり、尿路感染症の原因になる腸内細菌(グラム陰性桿菌)であるセラチア属、モーガネラ属、プロテウス属に属する細菌は、おそろしい院内感染を引き起こすこともあり、注目されている微生物です。


精油に対して、種々の細菌類が耐性を示すようになったという報告は、極めて限られたものしかありません。ある微生物に対して、ティートゥリー精油の濃度を上げないと殺菌力が減弱したとか、あるいは上述の腸内細菌に対し、抗菌力の強いオレガノやシナモンの精油を種々の抗生剤と組み合わせて実験をしたところ、細菌類をオレガノで処置してから抗生剤を使うと細菌の抗生剤に対する感受性に変化がみられたとか、前処理で、オレガノ自体に対する感受性が変化したなどの報告程度です。
in vitro(試験管内)の実験であっても、細菌が精油に対して強い耐性を獲得したというニュースは流れてきません。



私たちが病気になった時に服用する薬剤は、抗生剤の場合に合剤として抗菌スペクトルを広げるために他の抗生剤を組み合わせて投与したり、種々の目的別の薬剤を一緒に服用することはありますが、細菌に対する場合の話になりますと、単体の薬物は、構造は複雑でも1種類の化合物です。細菌は、敵の数が少ないですので、比較的簡単に敵の弱点を見いだして、耐性を獲得しているとも考えられないでしょうか。


精油の場合は、1滴の精油中にも、抗菌力を発揮する成分として、数種のアルコール類、フェノール誘導体などなど、ざっとカウントしても数多くの成分が混入しています。いえいえ、超微量の成分まで精査すれば、敵ばかりとは言えませんが、無数の有機化合物が入っていますので、どれを敵として捉えるかだけでも、細菌にしてみれば、非常にやっかいな敵であることでしょう。

以上は推論でしかありませんが、多くの病原細菌が耐性を獲得する時に関係するプラスミドDNAについて少しばかり勉強をすると、塗り薬として使用する際の精油のすごさの謎が解けてくるかと思います。

ここで、少しばかり動物の遺伝子のことをおさらいしておきましょう。"DNA"とか"遺伝子gene"とか、"ゲノムgenome"などの用語がよくメディアでも取り上げられますが、遺伝子geneというのは、様々な遺伝情報を担う因子そのものを指し(例えば、大型犬の体格を決める遺伝子など)、DNAという用語はその遺伝子を構成するデオキシリボ核酸という"物質の名前"です。[ここでは、RNAを遺伝子とするウイルスのことは除外してお話をすすめます。]4種の塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)が繋がったDNAの鎖が二重螺旋構造をとっていることは有名ですが、その中の一部の単位(部分)が遺伝子にあたると思って下さい。この遺伝子が連なって、それぞれの染色体上に並んでいます。ゲノムというのは、ある生物の染色体上にある全遺伝情報を網羅したものを意味し、gene(遺伝子)とchromosome(染色体)を合わせた造語です。


このDNAの二本鎖には、親鎖(遺伝子の配列がコードされる先端にプロモータという領域がある鎖)があり、ここに重要な暗号がしっかりと刻まれています。なぜ二本になっているかというと、一種の保険がかかっていると言われています。遺伝子の増幅中にDNA親鎖に変異が起った時などに、副鎖の方に、親鎖とは塩基が相補的ではありますが、その配列情報が残されているので、修復の可能性が高まるからではないかとも推察されているようです。

遺伝子は複製される際に、ちゃんとこの親鎖の情報をmRNA(メッセンジャーRNA)に酵素の力を借りて余分な部分intronを除き、exonと呼ばれる部分に書き込まれた蛋白質合成のための遺伝コードだけが手渡されます。その際に、塩基の1つであるDNAのチミンは、RNAでは別のウラシルという物質に入れ替わります。このタンパク合成の暗号(3種の塩基から成るアミノ酸をコードする"コドン"と呼ばれる単位)を持つmRNAは細胞核を出て、細胞質にあるタンパク合成工場となるリボソームという部署へ運ばれていきます。

動物の体内をめぐるホルモンや酵素も1種の蛋白質なので、特定のアミノ酸が組み合わさって作られています。

以前の記事で、猫はUGT1A6という大変重要な肝臓の代謝酵素に関して、このコドン情報のうち、タンパク合成過程で、ここでアミノ酸を繋げる作業を中止せよ!というストップコドン(別名:終止コドンは、ナンセンスコドンとも呼ばれます。アミノ酸をコードしていない意味の無いコドンの意味になります)に変異があるため、正常な酵素がつくられないというお話をしたことを思い出して下さい。遺伝子のこのような情報を精査するには、コドンが刻まれているmRNAを解析する必要があるのです。mRNADNA親鎖の情報を相補的な塩基に置き換えて写し取った情報を持ち、1本鎖構造をしています。

その後のリボソーム内では、mRNAを筆頭にRNA三銃士と呼ばれる、さらなるrRNA(リボソームRNA)やtRNA(トランスファーRNA)がそれぞれの役目を発揮して、この工場内で定められたアミノ酸が順番に繋げられて、酵素などの蛋白質が作られていきます。

非常に込み入った話になってしまいましたが、お話をプラスミドに戻します。プラスミドDNAは、上述のような遺伝子とは異なり、細菌などが増殖する際に重要な染色体上のDNAではないのですが、近隣の細菌同士で性繊毛などを介して連結し、情報をやり取りする不思議なメカニズムを持っています。病原細菌に対して抗生物質が投与されると、細菌は当該薬剤を敵とみなし、抵抗力をつけるために耐性を獲得していきます。その際に、このプラスミドDNAに変異が起って、耐性菌になっていきます。そのプラスミドDNA情報は、あっという間に近隣の仲間に伝えられるので、病原細菌はあっという間に、その薬剤では死滅しないという手強い病原体に変化してしまうのです。

医学の分野でも、このプラスミドDNAを消滅させて、病原体に耐性を獲得させまいと、antiplasmid効果を期待して、Chlorpromazinepromethazineなどの薬剤が試用されたことがありますが、劇薬に指定されているものもあり、抗菌剤との併用が困難を極めます。

ここで、精油でなぜ耐性菌ができにくいかという理由をご説明したいと思います。ただし、精油はボトルごとに成分変動が激しいことと、学術的報告がなされていても、研究に使用した精油の偽和の有無が不明な場合が殆どで、世のアロマ情報は真のエビデンスに欠けることが多いことなどから、精油を通常の西洋薬の飲み薬と同等と捉えることはできません。ここでは、外用薬として、塗布することに限ってお話させていただきます。

まず、病原細菌が耐性を獲得するには、プラスミドDNAなどに変異が起らなければなりません。ニトロソグアニジンという化学物物質で細菌を処理すると、その刺激でDNAに突然変異を起こすのですが、細菌を極めてうすい濃度のラベンダー精油で前処理しておくと、この突然変異が起らないことが確認されています。精油の中には、細菌のDNAの突然変異を起こしにくくするものがあるということが1つ目の理由です。

2つ目の理由は、精油の中には、Plasmid DNAを消失してしまうantiplasmid作用(別称;Plasmid curing, Plasmid elimination)を持つものがあることが判明しています。プラスミド自体が消失してしまうと、病原細菌は耐性を獲得する手段を失うということになります。その作用を有する精油の代表格は、ペパーミント精油と、その主成分であるℓメントールです。ペパーミント精油は0.325mg/mL96%のプラスミドを消滅させる作用があるとの報告です。その他、ユーカリ精油、ローズマリー精油にも、多少のantiplasmid作用があると述べられていますが、数十ドルするこの論文を購入して読んでみると、単にユーカリ精油、ローズマリー精油とだけ記載されており、精油を採取した植物の学名はおろか、研究者自身による成分分析もなされていませんので、数多くあるユーカリ精油の何の種類なのか、ローズマリー精油の主成分が何なのかが全くわからず、アロマ製品の偽和の有無に関する手がかりも全くつかめませんので、大変がっかりです。しかし、真のエビデンスは揺らぎますが、合成ℓメントールなどでantiplasmid作用が報告されていますので、精油における耐性菌の発現報告が限られていることからも、それなりの作用があることは間違いないと推察しています。

3つ目の理由は、前の記事でお知らせした通り、精油の成分が大変複雑で、ブレンドをすることにより、抗菌スペクトルが広がる可能性も示唆されます。精油の中に、複数のphytoalexin(フィトアレキシン;植物が産生する抗菌性の二次代謝産物)が存在することも、病原体にとっては耐性を獲得するのにやっかいな相手なのでしょう。正しい精油を使うことが絶対条件ですが、多剤耐性の病原菌が問題視される昨今、外用薬としての精油の利用価値は今後ますます高まるのではないかと感じています。

2014年10月19日 (日)

精油の鎮静作用

学術的に精油の鎮静作用がなぜ得られるかという情報は、種々の報告がなされていますが、研究に使用した精油の質を評価できない論文も数多く、科学的な証拠(エビデンス)が根底から崩れることが多々あるかと思います。ここでは、一般的な真正ラベンダー精油のリナロールなどが、血中に吸収された場合にみられる最も可能性が高い理論をご紹介したいと思います。

 

アロマセラピストの殆どが、精油がなぜ効くのか、という情報をお持ちではありません。ひたすら、xxの精油がxxに効くという情報をたたき込まれているように感じます。「血液脳関門」という用語する初耳の方が多く、アロマ教育の根本が抜け落ちていることに、怒りさえ覚えます。

 

鎮静作用というのは、副交感神経が優位になり、中枢神経が抑制されることを意味しますので、人での心理的なプラセボ効果を除外しますが、生理学的には精油成分が強固な「血液脳関門」を突破して、中枢神経領域に入り込まなくてはなりません。大脳は、私達の生命を司る中枢ですから、生体外異物のXenobioticsが簡単に侵入されると影響があまりに大きいですので、極力、いろいろな化学物質が脳内に入らないように守っている砦のような機構です。脳炎になると、薬を目的地まで届けるのに、大変な苦労を伴います。

 

人の場合、アロマに興味があると、アロマショップなどで事前の情報が入りますので、「ラベンダー精油は不眠症に大変効果的」と言われて精油を購入すると、それらしき香りのする香料であっても、暗示効果でグーグーと寝てしまう方がいます。しかし、動物では、事前に暗示を与えることができませんので、これにはしっかりとした科学的な理由なければ寝てくれません。

 

血液脳関門のお話に戻ります。その強固な関門を、精油成分の中には、いとも簡単に突破するℓ-リナロールのような物質があります。皆さんは、血圧を下げる作用があると言って、GABA(キャバ)が含まれる健康食品なるものを試された方もおられるでしょう。このGABAはγアミノ酪酸(ガンマアミノ酪酸)という物質で、生体内で産生される生理活性物質の1つです。それも、神経の興奮を収めるための抑制性神経伝達物質です。GABA受容体には何種類かあるのですが、この受容体にGABAがはまると、イオンチャンネルが開通し、塩素のマイナスイオンが、中枢に流れ込み電気的に興奮している神経を抑制するシステムになっています。当然、GABA受容体が活性化するということなのですが、その前に、活性化されるのに十分な理由があり、そこで体内の酵素が関係してきます。Rリナロール(アロマ界では、ℓ-リナロールと呼ばれる光学的に左旋性のリナロールです)が、キャバトランスアミナーゼというGABAの分解酵素を阻害するために、処理されないGABAが脳内で増えるために、次々に専用の受容体に結合し、中枢に塩素のマイナスイオンが大量に流れ込むという現象が起ります。これが鎮静作用のメカニズムとされています。

 

GABA受容体には、側面にベンゾジアゼピンという薬剤がはまる部位を持つものがあります。この薬剤は、トランキライザーとして、睡眠導入剤として、様々な種類がありますが、何らかの理由により、病院でこの薬剤を処方されている方がたまたまℓ-リナロールを多く含む真正ラベンダーなどの精油に曝露されると、安定剤なのに、睡眠薬を飲まされたように起きていられない現象がみられ、あるいは睡眠薬と同時に真正ラベンダー精油を利用すると、睡眠時間が延長し、翌朝仕事に遅刻してしまうというような事態になりかねません。この受容体にGABAとベンゾジアゼンピンが同時に結合すると、通常より大変太いイオンチャンネルが開くことが原因です。

 

この他に、睡眠薬が効き過ぎてしまう理由には、やはり代謝酵素に影響する精油の作用がありますので、このメカニズムを理解するには、しっかりと肝臓の機能を勉強しなければなりません。睡眠薬がちょうど良い時間に血中濃度が下がるように処方されているのに、精油を使っていると、代謝酵素が働かずに、いつまでも睡眠薬の成分が体内から排泄されない事象が起ります。全世界のアロマ教育で、一番すっぽ抜けてしまっている情報ではないかと思っています。

 

余談ですが、GABAを含む健康食品がありますが、口からGABAを摂取しても、外からもってきたGABAは、血液脳関門を突破することができませんから、脳内のGABAは食事で増えるということはありません。犬も猫もサプリメントが大流行りですが、特に動物のサプリは注意が必要です。私達は、獣医学的な理由がない限り、正しいごはんを与えていれば、乳酸菌製剤以外のサプリは不要ではないかと考えています。

 

精油は利点ばかりが強調されますが、医療関係者の皆様、どうぞ精油の薬剤との相互作用を軽視なさらないで下さい。ハーブや漢方薬以上に高度に濃縮された有機化合物です。精油はXenobioticsであるということを認識していただきたいと思います。

 

私どもでは、産婦人科でアロマセラピーの施術を行っている病院にも情報をご提供し、妊産婦さんや新生児への精油のリスクをご説明させていただいております。

2014年10月15日 (水)

ルネ=モーリス・ガットフォセ情報の誤り

メディカルアロマセラピーがフランスで確立したと信じている人々は、そのきっかけがガットフォセの大やけど事件であるという逸話を信じて疑わないかも知れません‥。彼が「Aromathérapie」と題した書籍を出版したのは1937年のことです。彼が化学者であった父の実験室でやけどを負ったのは、息子のHenri-Marcelが誕生したその日、1910725日のことでした(ガットフォセのお孫さんに直接お会いしている高山林太郎氏からは、この年号は1915年の誤りだとのご連絡をいただきました。私の記事はガットフォセの親族も参加なさったガットフォセの記録映画のテープ起こしからのデータで、そこに明記されている事故の年月日です)。

かなり重症で、ガス壊疽になったとも伝えられています。通常の逸話では、実験室にあったラベンダー精油を塗布して、みるみる間に火傷が治癒に向かったとされています。彼は、実は結構長期にわたり、病院に入院し、治療を受けていたとのこと。おそらく、退院後にプロバンス地方の農民たちがラベンダーのエッセンスを種々のトラブルに利用していたことを思い出し、実験室にあったラベンダー精油を火傷の傷に試し、大変効果的だったために、ラベンダー精油の抗菌作用や創傷の治癒効果に着目していったと記録されています。

 

以下は親族が所有していたその病院と病室の写真です。

Hospital Room

まだ、その頃は抗生物質などもありませんでした。記録では壊死した皮膚組織をピルビン酸で治療したことが記されています。いま一つ、傷のあがりが完璧でなく、思いたったガットフォセは、ラベンダーの精油、それも、おそらくテルペンレスラベンダーであったと言われていますが、それを試してみたところ、創傷がきれいに治ったとのこと。その後の著書でさかんにテルペンレス精油の効果を強調していることから、実際の経験に基づく彼の理論であるだろうと考えられています。

 

その後、1920年頃までは、ラベンダー以外の芳香植物を求めて、東欧のバラ農園、アルゼンチン、日本、中国、インド、マダガスカルなど様々な地域の芳香植物のリサーチに力を注ぎ、ビジネス展開にも熱心に取り組みました。同時に、多くの執筆活動もし、その書籍が外国語にも翻訳されるようになりました。研究結果を携えて、薬剤部門、香水部門、動物部門からなるアロマビジネス分野も立ち上げ、大変成功をおさめました。彼が興味を持っていたのは、精油や香料ばかりでなく、建築学、絵画、小説など、それはそれは多才な人物でした。

Leonardo_da_vinci

彼は、1928年頃から著書の中でAromathérapieという造語をよく使っておりましたが、それをタイトルとした本が1937年に出版され、さらに3年後の1940年には、Aromathérapie第2段が執筆されています。

Aromatherapie2

しかし、その書籍が世に出版されることはありませんでした。その書籍中には、彼が仲間と行った臨床実験、息子たちが行った医学的な研究などなど、大変興味深い内容が書かれているとのこと。彼は、テレビやハイウェイ、現代で言う研究発表に用いるパワーポイントに類するような技術の開発にも大変興味を示し、さかんにリサーチもしていたようです。

 

私は、ガットフォセは、究極の香水づくりに没頭した「にほいフェチ」だと勘違いしておりました。多才多芸な人物であったことを知り、大変興味をそそられます。Aromathérapie第二弾、これこそ出版されるべきアロマ関連書籍ではなかったかと大変悔やまれます。

 

1901年には、英国ですでに精油を自身の病院で治療に使っていた医師らがいます。イタリアでも、GattiCajolaPaolo Rovestiという医師らが精油の抗菌力の研究をしておりますので、決してフランスでメディカルアロマセラピーが生まれ、そこで確立したとは言えません。かの有名な「L'aromathérapie exactement;和訳:アロマテラピー大全」を著した2名の著者らは、すでにフランスにおける活躍の場を失っており、その場をフランス外に求めて暗躍しているのではないかと言われています。精油の飲用などに関する科学的根拠を追求され、ひたすら逃げ回ることしかできない彼等を大歓迎するアロマセラピストであふれる日本は、彼等にとっては天国なのでしょう。

 

この書籍の復刻活動をなさっている高山林太郎氏から時折お電話をいただきますが、私は復刻断固反対の意思表示をさせていただいています。その理由は、市販の精油の大部分に偽和があるとされている昨今、学術的根拠が示されていない精油の使い方や、安全性データがない精油を用いたメディカルアロマと称するレシピだけが一人歩きをしたら、どれほど危険なことでしょうか。アロマ関連書籍が書店の棚を賑わしています。それらに書かれている情報は本当に正しいものでしょうか。

2014年10月14日 (火)

なぜ猫に精油が危険なのでしょうか。

前の記事でお知らせしたe-Bookが公表されると、米国のブログの読者から質問のほか、米国にはネコの治療に精油を利用している著名な獣医師がいるので、その獣医師と話し合いをするように、などの書き込みがなされました。私は、その獣医師とは考え方が異なるので、同じ土俵に乗る気持ちがないことをお伝えすると大変辛辣な批判もなされ、その獣医師の根強いファンがいることを思い知らされました。


私は、なぜネコでそれほどアロマが危険なのか、いかなる理由があってもアロマはネコにとってはリスクが高過ぎるかということを、可能な限りわかり易く説明を加えました。


肝臓の2段階目の代謝酵素で、UGT1A6というのは、人をはじめ、すべての動物でも肝臓のこの段階の代謝/解毒の1/3を担う大変重要な酵素です。今までは、イエネコと一部の野生ネコなどで、その遺伝子が偽遺伝子で、正常な働きをしないのだと言われてきました。ここほんの一、二年のこと、人の薬理学者の研究で、たまたま種々の動物たちの血液検体が入手できたのでしょう、この非常に大切な酵素をつくる遺伝子の解析が行われました。mRNAのタンパク質をつくるコドンという単位の分析が詳細になされたのです。いままで漠然と不完全な酵素とだけしかわからなかった部分が、遺伝子のどの部分に変異があって、この酵素が働かないのかが解明されたのです。それも、イエネコのみでなく、調べた野生のネコ類で、遺伝子に異常があることが判明しました。これは、真の肉食動物とされるネコ類が、どれほど昔から植物に接する機会がなく、植物の成分を代謝する機会も、必要もなかったことを如実に物語っています。大型でも小型でも、ネコたちは、遺伝子的なハンディキャップを背負っていると言えるでしょう。


更にイエネコに関しましては、肝臓第一段階目の代謝酵素のCYP2Cや、薬剤などの代謝に極めて重要とされるCYP3Aの活性も非常に弱く、様々な毒物/薬物の代謝力は、他の動物種の1/6 1/10しかないとの報告もなされているのです。ネコの飼い主さんたちは、それでもネコに精油を使ってみたいでしょうか。精油を治療に用いている獣医師たちは、きっと、上述のようなネコの代謝酵素や遺伝子の情報をお持ちではないでしょう。治療に成功したネコは、単にラッキーだったとしか言えないのではないでしょうか。もう一度、同じ治療をしたとしたら、何が起るかを予想できる人は皆無です。また、雌ネコは雄ネコより、リスクが高いということも判明しています。ネコばかりではなく、子イヌも、肝臓酵素UGT1A6を持っていませんので、子イヌには、ネコと同様に精油は使うべきではないと思っています。人の新生児も、UGT1A1を持っていませんので、自分の胆汁を代謝できずに新生児黄疸が起ることはあまりにも有名です。それでも、ベビーアロマも産院での出産時の精油の利用なども大ブームです。精油の偽和の観点から言いましても、新生児や周産期や授乳時に精油を利用するのは、決して賢明ではないと考えています。


新生児や幼児に対する精油利用の危険性は、是非Maria Lis-Balchin著「アロマセラピーサイエンス」をご参照下さい。

2014年10月13日 (月)

猫から飼い主への手紙

猫を飼っておられる方々に、是非ともお読みいただきたいTorajaの手紙です。20074月に初版が発行されましたが、諸般の事情で再出版がかなわず、電子書籍で対応して参りましたが、それも絶版となり、中古の書籍が3万円越えの価格で販売されることなどがあり、大変憂慮しておりました。

2014624日、多くの読者をもつ米国の同志が私どものe-Bookをブログで公開してくださり、どなたでもお読みいただける体制が整いました。お一人でも多くの猫の飼い主さんに、ペットの飼い主さんに、そして、


精油を使って猫を治療しておられる獣医師の皆さんに、また、世界のアロマ関係者すべての方々に、読んでいただきたいと心から願っております。


書籍の画像にアクセスしてしばらくお待ちいただくと、次のページへ移る矢印が現れますので、順に全ページをお読みいただけます。PDFファイルとしてダウンロードいただくには、5ドルの寄付が必要です。

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